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第24話
「えぇと…真下先輩とは、仲がお悪いんです、ね…?」
「うんそう! すげー嫌い!」
すげーいい笑顔。
「ちょ、史生(しお)くん」
清瀬先輩が少し慌ててる。
…そういう顔もするんだな。……じゃなくて!! しっかりしろ、俺!!
「あ、俺すいちゃんと同じクラスの八月朔日 史生(ほずみ しお)。8月1日の方のほずみね。歴史の史に生きるで史生。よろしく」
「万の谷に、千の景色で、万谷 千景です。初めまして」
「万谷くん、今日は誰かと来てるの?」
「あー、っと…友達に誘われて、他校の人と」
「そっか、残念。ちょっと話してみたかったんだけどな…」
八月朔日さん、タレ目だからかすごい犬っぽさがある。
「あの…史生くん、そろそろ手を離してあげたほうが…」
「あっ、ごめん。ずっと握っちゃってた」
「あ、いえ。大丈夫です」
握られてた手が離れる。
「万谷くん、テーブルどの辺なの?」
「あっちです。あの、一段と目立つ集団の中で目立たないようにしてます」
万亀たちが座っているテーブルを指差す。
特別可愛い子がいることで、こうやって見ると割と目立つな…。
モブ顔の俺があそこに戻るのって結構きつくない? さっきまでどんな顔してあそこにいたんだ、俺は…。やべぇな。
「おー、めっちゃ可愛い子いるじゃん」
「あー、いますね」
「ははっ、万谷くん興味なさそう」
八月朔日先輩に笑われた。
「や、興味がないと言いますか…」
俺、八月朔日先輩の隣にいる清瀬先輩のことがすごく気になってるんです。
――って言えたら楽なのにな。
「あれって合コン?みたいな感じ?」
「え、どうなんでしょう」
「何にも考えないで来たの?」
「友達に行こうって言われて来た感じです」
「何かすごい他人事感…」
俺もそう思う。
「あ、じゃあさ、ごはん食べた後は? 時間ある? この後みんなでどこか行く感じ?」
「あ、そこまで聞いてないっす」
「そっかぁ。俺たちあっちにいるからさ、もしどこか行くとかじゃなかったら声かけてよ」
「あ、はい」
「じゃあね。引き留めてごめん。すいちゃん、飲み物取りに行こー」
「あ、うん。えっと…万谷くん、あの」
清瀬先輩は何か言いたそうにしてたけど、小さく首を振って「何でもない。またね」と笑った。
それがあまりにも淋しそうで、俺は思わず先輩に手を伸ばしていた。
「っ、あのっ」
初めて先輩に触れる。
先輩の手首はびっくりするほど細かった。
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