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第28話
「真下先輩と八月朔日先輩って仲悪いんですか?」
あ。そうか、万亀は知らないんだった。
でも、清瀬先輩が真下先輩の3番目の恋人だったことなんて、わざわざ話すことじゃない。
「うん。俺ねぇ、真下のことすげー嫌いなの」
「すげー笑顔ですね」
けど万亀も、そういうのいちいち聞くようなやつじゃないしな。
「千景はねー、確かに真下先輩の後輩ですけど、めちゃくちゃいいやつなんですよ! 友達がバカにされたら絶対怒ってくれるし、ノリもいいし楽しいし」
「飴宮くん、万谷くんのこと好きだねー」
「きゃーっ、照れちゃうっ」
…ほんと仲良しだな、この2人。
「万亀と八月朔日先輩ってほんとに初対面っすか? 仲良すぎません?」
「えー、初対面だよー?」
「千景…まさかヤキモチを…!」
「大丈夫だ。それはない」
「否定早っ」
万亀が清瀬先輩とそれくらい仲良くなったら妬くけどな。多分。ってか、絶対。絶対妬く。
「八月朔日先輩っていつもあんな感じなんですか?」
隣の清瀬先輩に聞くと、先輩はおかしそうに笑った。
それを直に受け止めた俺の心臓は一気に疾走し始める。
「史生くんはね、小さい頃から友達作るのが上手いんだよ。俺はちょっと苦手だから、いつも史生くんに助けてもらってたなぁ」
「俺が小さい頃先輩に会ってたら真っ先に声かけに行くと思いますけど」
「分かるー。可愛いもんねぇ。俺もめちゃくちゃ可愛い子がいる!って声かけたもん」
「もう、史生くんってば」
「いや、そうなりますよ。あの子めちゃくちゃ可愛い!って声かけますよ、ガキの頃の俺なら」
今は無理。そんな無邪気にいけない。
「っそ、そうかな…っ」
清瀬先輩が照れながら笑う。
鼓動がどんどん早くなって、いつかこの心臓は破裂するんじゃないだろうか。
それくらいドキドキして苦しい。
「っ…じゃあ、今は?」
「はぇぇ…?」
俺はいま何を聞かれたの?
「いやっ、言ったじゃないすか! 先輩 高嶺の花感あるから…! 高い峰を登る度胸は俺には…!」
「いや。登ってみようよ、万谷くん!」
「チャレンジする価値はあるよ、千景!」
「無責任に背中押すのやめてくれるかな!? この2人 絶対 峰の途中で俺を突き落とすつもりだよ!」
「「そんなひどいことしないよ!?」」
「…しそうだから言ってんすよ」
「えっ、俺たち信用なーい。すいちゃん何か言ってあげてよー」
「…俺以外みんな仲良くてずるい」
「「「可愛い!!」」」
3人でシンクロしてしまった。
「…まぁでも、高嶺の花とか言って遠巻きにされんのは嫌っすよね…」
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