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第30話
万亀たちの方を見れば、何か2人してスマホを見せ合いながら犬の話題ですげぇ盛り上がっていた。戻ってこい。俺のために。
「……え、っと…せ、先輩の、ご迷惑にならなければ、ぜひ…」
「迷惑なんて、全然! ……よかった」
「え?」
最後に小さく何か言ったのがよく聞こえなくて聞き返したけど、先輩は「何でもない!」と首を振った。
「あー、と…先輩の好きなこととか好きなものとか、そういうの全然知らないんで…まずはそこから教えてもらってもいいっすか? んで、俺あんまり遊ぶ場所とか詳しくないんで、一緒に決めましょ」
「うん…! 俺にも万谷くんの好きなものとか教えてね!」
あー!! 誰か!!
清瀬先輩の可愛すぎる笑顔にドキドキキュンキュンしてる俺を戒めてください!!
「……今が俺の人生のMAXかも知れない…」
「え?」
「今が人生イチ幸せかもしんないっす…」
「っそ、えっ…大げさだよ…っ」
大げさかな。
この先何があっても、先輩との思い出だけで生きていかれる気すらしてる俺やばい。
ところで万亀たちはまだ犬の話題できゃっきゃしていた。どんだけ好きなの、犬。確かに可愛いけどさ。
「え、っと…清瀬先輩は、賑やかな所と静かな所だと、どっちが好きですか?」
「あの…ゲーセンみたいな賑やかさは、ちょっと苦手」
「あー、分かります」
「ほんと? でもテーマパークとかの賑やかさは好きだよ。博物館とかの静かな所も好き」
真下先輩とは、どんな所に行ってたんだろ…。
「あのー、絵とか写真は好きですか?」
「うん、好き」
「そ、…っ」
それなら。
「あの、じゃあ、えっと…好きな写真家の写真展あるんですけど…よ、よかったら、先輩 一緒に、どう…っすか…?」
万亀を誘おうかな、って思ってたんだけど…。先輩と見れるなら、先輩とがいい。
万亀すまん。
「え。いいの?」
「全然! あの、先輩が、嫌じゃなければ」
「嫌なわけないよ。ありがとう」
清瀬先輩がふわりと柔らかく笑う。
心臓がうるさい。
「あの、その写真展、来週から始まるんです。えっと、文化会館の多目的ホールが会場で」
「学校帰りに寄ってもいいけど…そういうのはやっぱりじっくり見たいよね」
「そうですね」
学校帰りでもいいけど、俺としてはなるべく長く先輩といたいから素直に頷いた。
いや、写真だってじっくり見たいよ? 好きな写真家だし!
「土日のどっちか、先輩空いてますか?」
「うん」
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