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第31話

俺は心の中で両手を挙げて歓喜の雄叫びを上げた。それくらい嬉しかった。マジで。 「じゃあ、土曜日でもいいっすか? 午前と 午後だと…」 「土曜日だね。えっと…文化会館開くの9時だから、10時くらいに待ち合わせる?」 「そうですね。あの、それで、えっと」 写真見た後も、もう少しだけ一緒にいたい。 ワガママになるけど、先輩に次の恋人出来るまでの間だから…許してください。神様。 「あの、そう! 靴を、買いたいんで、写真見た後 付き合ってもらえませんか?」 心臓がバクバクいってる。これで断られたらすぐに引き下がるけど。 先輩は俺を見上げてはにかむように微笑んだ。 「いいよー」 何その返事!! くっっそ可愛いな!! もう!! そんでその笑顔!! くっっそ可愛いな!! 天使か!! 心臓破裂するわ!! 「…ぅぐ…ッ、ありがとうございます…!」 「万谷くん? 胸押さえてどうしたの? 大丈夫?」 「大丈夫っす! 元気です!」 先輩のおかげで! 「そう…? ならいいんだけど…」 清瀬先輩って何でこんなに綺麗で可愛いんだろう。 「あ、じゃあお昼も一緒に食べようよ。どう、かな…?」 「ぜひ」 清瀬先輩の上目遣いに抗えるやつがいると思うか? 思わないね。 俺は即座に頷いた。自分に正直に。 「万谷くんは、靴とかいつもどこで買うの?」 先輩が俺を見上げるその目に、すごくドキドキする。 「あの、駅ビルか、モールっすかね」 単純に仲良くなりたい、それ以上の欲が出てきそうで、俺はそれをぐっと押し殺した。 清瀬先輩が好きだ。 だけど、それだけにしておかないと、自分が止まれなくなりそうで。 「駅ビルの中にも靴屋さんあるんだ?」 「2階に入ってますよ。先輩、駅ビルそんな使わないですか?」 「あんまり入ったことないかも…」 「じゃあついでにぐるっと見てみません?」 「うん!」 先輩が笑顔で頷く。 あぁ、本当に可愛い。 自分がどんどん深みにはまり込んで行くのが分かって少し怖くなった。 諦めなきゃいけなくなった時に、俺はちゃんと諦められんのかな。 でも…。 諦めつかなくて、苦しくて悲しくてどうしようもなくなる、そんな経験も、きっと必要なんだろうな。 なんてことを、俺はふと思った。 ――ところで、万亀と八月朔日先輩はいつまで犬トークで盛り上がってるつもりなのかな。 俺と清瀬先輩以上にあの2人が仲良くなってねーかな。別にいいけど。

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