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第33話
「緊張ってか…」
「違うの…?」
可愛い! 上目遣い可愛い!!
俺の心臓がやばい!!
「緊張、しますよ! そりゃ! だって先輩すげぇ美人だし!! 見たことないくらい綺麗だし!! しかも仕草とか中身とかほんと可愛いし!! 八月朔日先輩とはやっぱ違うんっすよ~」
「…っ、…」
分かってくれよと地団駄を踏みそうな勢いの俺の隣で、先輩が顔を俯けた。
あれ? 俺 変なこと言った?
「先輩? どうかしました?」
「っな、何でも、ないっ」
「え?」
何でもある感じするけど…。
先輩は両手で頬をぎゅっと押さえながら、そろりと俺を見上げる。
目尻がほんのり赤く染まって、さらに可愛いことになってる。…ちょっと色っぽ…何でもないです!!
「…万谷くんは、ちょっとずるい…」
「えっ!? 俺のどこが!?」
「…教えない」
「えぇっ!?」
気になる!!
先輩にめちゃくちゃ翻弄されてるなぁ、と思うけど、それもまた本望。
清瀬先輩になら、弄ばれたっていいや。そんなことする人じゃないだろうけど。
「…万谷くんって」
「へぁ? はい!?」
やっべぇ! 変な返事した!
慌てる俺に、先輩は目許をほんのり色付かせたまま小さく笑った。その破壊力ときたら。
心臓が変な音立てて一瞬止まった。やばい、不整脈か。
「前に、付き合ったことないって言ってた、よね…?」
「え? あ、はい。そうっすね」
「あの…何で…?」
何で?
「え、それは…単純に、俺がモテないから」
悲しいかな、ほんとに凡庸だからな。
「モテない…。そうかなぁ…」
そう呟いた唇が、少し不満げに突き出される。その柔らかそうなピンク色から目が離せなくなる。俺やばい。
「好きな子は、いたの?」
先輩が軽く首を傾げて俺を見上げた。
好きな子は…目の前にいます。それを言える度胸はない。
「えっと…前にってことですか?」
「あ、うん」
「前は…」
どうだったっけな。好きって感覚はそんな…なかったような…?
「えーっと、友達の姉ちゃんが可愛くて、ちょっと憧れてた時期は、あります」
「そう、なんだ…。年上が、好き、とか…?」
「どうなん…どうなんっすかね。いや、でも…」
今も好きなの年上だしな。そうなのかな。
「あんまり考えたことないっすけど、そうなのかも」
「そっか…」
「え、あの、急にどうしたんっすか?」
そんなこと聞かれたら、ただでさえ耐性ない上に好きな人目の前にしてるから…変な期待をしそうで怖い。俺が俺を怖い。
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