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第34話
「え、と…色々、気遣ってくれたし、優しいでしょ? だから、相手いなかったの不思議だなぁ、って」
「そ、っそう、ですかねっ」
ちょっとほんとに、どうする。え、ほんとに可愛いんですけど。ずるいんですけど。
好きな相手にそんなこと言われたら…やばいでしょ。
待て俺。先輩はそういうつもりじゃないから。一般的な意見を言ってるだけだから。落ち着こうぜ。心臓うるせぇ。
「まぁ、でも、ほら。あの、中学ん時とかも、ジャニーズ系ってか…そういう格好いいやつがモテてたし。俺はそういう系統じゃないですし。だからこう…対象外的な?」
「そうかな」
焦る俺とは対照的に、先輩は静かにぽつんと声を落とした。
「格好いいっていうのは、外だけじゃないから。相手が傷つかないように考えてくれるのって、そういうことが出来る人って、俺は格好いいと思うよ」
そう言って、ふわりと花が綻ぶような柔らかい笑顔を見せる。
俺はそれに心臓を鷲掴まれ、全然気のきいたことも言えなくて、すげー挙動不審でカッコ悪かったと思う…。滅せよ。
可愛いとか綺麗とかそういうことだけじゃなくて、相手の人となりを褒める言葉がするっと出てくるところも魅力的だし、好きだな、って思う。先輩を好きになって、よかった。
いつかは諦めなきゃいけない恋だけど、その時もきっと、いい恋だったって思えるはず。
確実に大きくなっていくこの気持ちを、俺はいつまで隠していられるかな。そんな不安もあるけど、今はただ、清瀬先輩の隣にいられることが素直に嬉しい。
思い出をもらって、それでいつか来る終わりの日には、ちゃんと笑顔で離れよう。先輩の新しい恋をちゃんと祝って、終わりにしよう。
実際はそんな綺麗にはいかないんだろうけど、好きな人の幸せは、純粋に心から祝いたいんだ。そうできる自分でありたい。
「万谷くんは、年上のどんなタイプが好きなの?」
「えっっ?」
目の前にいる清瀬先輩がど真ん中でタイプ。
とは言えない小心者の俺。
「えっとー…穏やかな…? 柔らかい雰囲気の…」
「ふぅん?」
「………………っ…清瀬先輩みたいな、癒し系、とか」
「え、」
「何か、そういう…ほんわかしたタイプが、好きです、ね」
めっっっ…っちゃ勇気振り絞った、俺!!
よくやった!! 褒め称えてやりてぇ!!
「っそ…、なんだ、ね…」
先輩の方見れねぇ…!!
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