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第40話

「先輩ごめん…。ごめんなさい…。傷つけるつもりなんて全然なくて…今さらこんなこと言っても言い訳にしかならないけど、俺、先輩のこといらなくないですよ。すげぇ必要です。…けど、俺には多分、自信がない、っつーか…」 自信…? って呟いた先輩が、首を傾げた。 「俺、ほら、普通じゃないっすか。俺みたいなのが、馴れ馴れしく仲良くしてていいのかな、って」 「それは…俺がいいって言えばいいんじゃないの? 他の人って、何か関係あるの?」 「…ない…と言えば、ない」 「ないと言えばじゃなくて、ないよ。ない」 先輩はキパッと言い切ると、俺としっかり目を合わせた。 俺は先輩の瞳にドキドキして、うろうろと視線をさ迷わせてしまう。このヘタレが。 「万谷くん、こっち見て」 「はい、すみません」 やばいんですけど。何かもう、こんな風に注意されるだけでも可愛いしすげぇドキドキする。 「あのね、自信がない、っていうの…ちょっと分かる」 「え!?」 先輩が!? って気持ちが一言に溢れすぎてしまった。多分、顔にも出ていたんだろう。清瀬先輩は苦笑いを浮かべた。 「俺だって人間だからね」 そうなんですけどね。 「万谷くんとはちょっと違うんだけど…涼輔と付き合ってた時、俺ずっと自信なかった」 「え」 「だって他はみんな女の子で、こう…胸とか、脚とか、涼輔の好きな感じなんだろうなぁ、って見てて分かったから。けど俺はさ、男だから。胸もないし、脚も…出さないし、武器っていうかさ、そういうの分からなくて…。涼輔は俺のどこを好きになってくれたんだろう、って…めんどくさいことばっか考えてた」 …俺、当たり前だけど全然 清瀬先輩のこと、知らないんだな。 それを改めて思いしらされて、喉の奥がぎゅっと詰まった。 「…自信がなかったんだ。好かれてる自信が。好きだって言ってくれたけど、涼輔の心が見えなくて…。そんなだから『いらない』ってなったのかも知れないけど」 そう言って、清瀬先輩は視線を遠くに投げた。 それは、見えない懐かしい日々を眺めるような…そんな感じがした。 「付き合ってたけど週に1度しか会えなくて、日曜日は2ヶ月に1回くらいしか会えなくて、なのに好きになっちゃって…バカだね」 「……」 そんなことない、とか下手な慰めは口に出来なかった。だって俺は清瀬先輩でも真下先輩でもないから。その頃の2人のことを、俺は何も知らない。

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