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第43話
チカちゃん?って一瞬思ったけど、そう言えばシノギダ先輩の下の名前『チカシ』だったな、と思い至った。可愛い呼ばれ方だ。
空から視線を戻した時、「あれ~?」って声がした。俺の嫌いな声。
「…どーも、谷口先輩」
一番会いたくねぇよ、あんたに。清瀬先輩に会うための準備してきて、何で真っ先にあんただよ。…いや、でもここにまだ清瀬先輩がいなくてよかった。
「おはよう。久し振りじゃん」
「そっすね」
「最近全然 来ないね、屋上」
「階段上るのダルいんすよ」
「ふ~ん?」
ニヤニヤ笑いの先輩は、俺の隣に腰を下ろした。やめて。どっか行って。邪魔だから。
「ねぇ、最近3番さんと会ってんの?」
「それ先輩に関係あります?」
「いや?」
ってゆーか多分この人分かって聞いてるよな。
「惚れてんの? 結構一緒に帰ってるっぽいじゃん」
「え、先輩は惚れてる相手としか帰らないんすか? …友達いないとか…」
「おい」
凄味のねぇ凄み方するんじゃねぇよ、腰巾着。素直にそう言わなかった俺を褒めてあげたい。
「惚れてなくても一緒には帰るでしょ。ほんとすーぐそういう風に持ってくんだから。だから真下先輩に『お前は彼女ができないんだ』って言われるんすよ」
「最後はお前もブーメランだからな?」
うるせぇよ。
「で? 先輩ヒマなんすか?」
「うるせーな。暇じゃねーよ」
だったらさっさとどっか行けよ。
「待ち合わせ?」
「まぁな」
「へぇ~。彼女ですか?」
「……」
無言かよ。
「…涼輔の5番目」
「は?」
「押し付けられちゃって」
「え、また別れたのあの人」
「素直すぎねぇ?」
「これでも我慢してますけど?」
マジかよ…。って引いてんじゃねぇぞ、こら。
「清瀬先輩と別れたの先週っすよね」
「今週ってか昨日また別れたんだよ」
「で、新たなる5番目の恋人さんは既にいるんすね、この前みたいに」
「いや」
「えっ、じゃあ空きポジション?」
「サッカーみたいに言うんじゃねーよ」
まぁ、空いてるけど~。って先輩はぼやく。
「ってか、先輩素直に5番目の恋人さんと会うんですね」
「まー美人だし~? テキトーに遊んどけばいいんだよ」
分かってたけど最低だな、こいつ。
真下先輩ってそういう風に他の彼女も扱ってんだな。いらないからあげる、って簡単に言えちゃうんだもんな。
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