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第45話

「割り切ってたんだ?」 「じゃなきゃ自分が辛くなるだけだもんね。そりゃあマミだって、先輩の一番になりたーい!って思ったこともあるけどぉ。けどさ、優しくしてくれるのとか、可愛いよ、って言ってくれるのとか、涼輔先輩だけじゃないしね。マミを一番にしてくれる人がいいな、って思ったの。それ言ったら振られちゃった」 ざーんねん、って軽く言って笑うと、「じゃあね」って手を振って、諏訪野さんは谷口先輩と歩いて駅のロータリーを出ていった。 ほんとスッパリ割り切ってんなぁ、諏訪野さん。強い。 けどやっぱり、自分が一番になりたいよな。自分だけの彼氏でいてほしいよな。本気で好きになったら、なおさら。 あ、谷口先輩のとこ殴るの忘れてた。 まぁいっか。またの機会で。 待ち合わせまでまだ45分あるし、清瀬先輩の可愛いとこを1つずつ挙げていくかな…。なんて若干、いや、かなり気持ち悪いことを思いつく。すげぇ気持ち悪いけど、多分俺これで45分間潰せるわ。 まず、飲み物両手で持つとこだろ。それからきれいなピンク色した形のいい爪が可愛い。考える時に頬っぺた触るとこ。んで、唇が可愛い。小ぶりで通った鼻も可愛い。パーツが全て可愛い。笑顔は最強に可愛いけど、困り顔も照れ顔もすげぇ可愛い。髪の毛さらさらなんだけど、たまに出てるアホ毛すら可愛い。へへ、って笑い方も可愛い。先輩の声に名前呼ばれんの好きなんだよな…。 「…万谷くん…?」 そうそう、こんな風にちょっと躊躇いがちなのも可愛いよな…ってーーえ!? 俺は慌てて声のした方を見た。 「おわ!? えっ、清瀬先輩! あっ、えっ、おは、えっ? おはようございます!?」 「何でそんなにびっくりするの? あ、おはよう」 「いや、え、だって…まだ9時15分過ぎたとこだし…」 「そっ…それ言ったら、万谷くんだって…」 そうでした!! 「俺はっ、アレです! あの、何だ…その…浮かれすぎて、早起きしちゃいました的な…アレですよ」 うわ、恥ず。正直に浮かれすぎたとか言わなくていいやつじゃん、俺。 「あ、そ…そうなんだ…」 先輩が目尻を染めて目を伏せる。この表情も可愛いな、おい。 「…楽しみ、だった?」 「もちろん!」 「ありがと。…俺も、楽しみだったよ」 「!!」 ズドン!! と、ほんとに音がしたんじゃないかと思うくらいの衝撃で、先輩の笑顔に思い切り胸をぶち抜かれた。

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