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第46話

あぁ、好きだ。 何度目か分からないそれを、俺はぐっと噛み締める。 「時間より早いけど、写真展行きましょうか」 「うん!」 谷口先輩がこの辺にいることは黙っておこう。だって清瀬先輩に嫌な思いさせたくないし。せっかく今日の写真展楽しみにしてたんだし。 俺が気をつけて見ていよう。あとモールには近づかないでおこう。絶対。 「今日見に行くのって、桐原 侑真(きりはら ゆうま)さんって写真家の人のなんだね」 目的地に向かって歩きながら、先輩がそう口にした。 「あ、そうなんですよ」 「文化会館のサイトに載ってて、それで桐原さんのSNSも見てみたんだ。上手く言えないんだけど、こう…ストーリー?が浮かぶような写真撮る人なんだなぁ、って…あ、俺の勝手な感想だけど」 「分かります! 1枚の写真から物語が見えてきますよね!」 「うん。万谷くん、ほんとに好きなんだね」 そう言って、先輩は柔らかく微笑んだ。あぁ、この表情もほんとに可愛い。すげぇ抱き締めたいけど、それは我慢だ。我慢ってか、やったら犯罪。 「先輩って、どこか行く時ちゃんと下調べするんすね」 「そんないつもはしないよ?」 「え? じゃあ何で今日…」 「それは…」 先輩が、少し恥ずかしそうに俯いた。 「…万谷くんが、好きって言ってたから…」 「ぐぅ…ッ」 胸が痛いくらいときめいた。今のはずるい。ずるいけど、すごく…嬉しい。 「そういうとこ、ほんとずるいくらい可愛い…何すか先輩、天使ですか?」 「えっっ?」 「あーやば…」 これはやばい。どんどん惚れるしかない。やばい。俺チョロすぎな自覚はあるけど、だってしょうがないじゃん。好きなんだ。 今この瞬間の俺の幸せを体現したら、それは清瀬先輩の形をしていると思う。 「…万谷くんは、たまにズルいよね…」 「ぅへ!?」 唇を尖らせた先輩が、ぷいっとそっぽを向く。 何その仕草。可愛いんですけど。 「俺、俺のどこが…?」 「…教えない」 ちょっと拗ねたような恥ずかしそうなその表情も愛おしすぎて、俺の胸は高鳴りっぱなし。忙しい1日になりそうだ。主に心臓が。 先輩のそういう表情を、この先もずっと独り占めしたい。 だけどそれは、俺には大それた願いだ。だから、望まない。 「清瀬先輩だって、俺にしてみればズルいですよ?」 「どこが?」 「んー…それはちょっと一言では」 一言にはおさまらないもんな。

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