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第50話
俺が、守れたらいいのに。本当に。
真下先輩に嫉妬するけど、まだ見ぬ次の彼氏にも多分俺は勝手に嫉妬してる。
気持ちを伝える度胸もないくせに、嫉妬だけは一人前とか。バカバカしくて笑える。
「そう言えば先輩って誕生日いつなんですか?」
「俺? 1月。冬生まれなんだ」
「年明けならまだもう少し先ですね」
その頃俺はまだ一緒にいられるかな。いや…こんなに魅力的な先輩だから、別の、同じくらい魅力的な人が隣にいるかもな…。
「万谷くんはいつ?」
「俺 7月です」
「そっかぁ…もう過ぎちゃったんだね。来年はお祝いしようね」
多分それは何気ない一言なんだろうけど、今の俺には嬉しくてでもひどく切なくて。嬉しいのに泣きそう。泣きそうなのに嬉しい。
「…っ、ありがとうございます」
先輩、来年はきっと俺の隣にはいないですよ。もっとずっとカッコよくて頼りになって自分に自信のあるいい男が先輩の隣にいますよ。…なんて、思ってても言えない。
すげー卑屈過ぎて、そんなカッコ悪い自分を先輩には知られたくないから。
「…あの、さ」
「? はい」
「えっと…俺の誕生日、その…万谷くんにも、お祝いしてもらえたらな、って…」
「ありがとうございますッ!!」
「えっ!?」
上目遣い可愛いかよ!! 可愛いよ!!
えっ、俺 先輩の誕生日お祝いしていいの!? 国家の祭日にするわ!!
もう俺のテンションどうなってんのかほんとに分かんねぇ!
さっきまで卑屈でしんみりしてたのに…先輩の一言ですげー振り切れんじゃん…。我ながら気持ち悪っ。
「ちょっと俺、今やばいですね」
「やばいかどうかはちょっと分かんないけど…俺が頼んだことにお礼言ったのは何でかな、とは思ったよ…?」
俺がお礼言う方だよね?って先輩が言う。
いいえ。俺がお礼言う方です。
「先輩の誕生日祝える機会なんて、俺の一生に一度あるかないかです」
「そんなオリンピックで優勝した選手みたいな…。万谷くんがお祝いしてくれたら、すごく嬉しいよ」
一度でも二度でも、毎年でも祝えるくらい近くにいたい。先輩が好きだ。
誰にも隣を譲りたくないって思うくらい、先輩が好きだ。
だけどこれは、俺のワガママだ、ってちゃんと知ってる。しんどい。なのに、それでも、好きだ。
きっといつか、俺はこの気持ちを抑えきれなくなる。その時…先輩に気持ちを伝えることができるんだろうか。
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