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What a wonderful day
知ってほしい気持ちと知られたくない気持ちがぶつかって揺れる。
まだ、そばにいたい。そう思う俺は、ずるい。
先輩を見ると、先輩もこっちを見ていて思い切り目が合った。
「っ!!」
途端にばくりと胸が大きく跳ねる。
先輩、虹彩の色素薄いんだな…なんて新たな発見もしてしまって胸が落ち着かない。
「お、俺ごときが見ててすみません…っ」
「えっ」
慌てて目を逸らしたけど、やばい、顔すげぇ暑い。鼓動が、うるさい。
「万谷くんは『俺なんか』とか『俺ごとき』とか言うけど、そういうの、…やだ。俺、万谷くんのこと、そんな風に思ったことない。だから………やだよ。やめて…?」
「やめます」
条件反射か。俺の口。
「あとあの…別に、万谷くんに見られるの……嫌じゃ、ないよ」
「えっっっ」
思わず先輩を見ると、先輩は俺じゃない方へ顔を逸らしていた。髪の隙間から覗く可愛い耳が赤い。
それを見て、どうしようもないほどの愛しさが込み上げた。
俺、多分 何回でもこの人が好きだ、って思い知らされると思う。骨の髄まで染み込むくらいに、何度も何度も。そうしてきっと、先輩じゃなきゃダメだ、って同じだけ認識させられる。
届かないのに。
「先輩、あの…俺の心臓のために、あんまり可愛いのは、マジで、ちょっと…ほんとに、勘弁してください…」
「え…」
「俺、先輩の耳すら可愛いと思う変態なんで、ほんとに」
「え、耳…」
先輩がパッと耳に触れた。
「何しても可愛いんで! マジで! ちょっと心臓いまヤバイっす!」
「そ、そういうの、反則…」
隠した顔が赤い。可愛い。
すげー可愛い。好きだ。
俺にもっと語彙力があれば、可愛いとかヤバイとかそんな言葉じゃなくて、俺がどれだけ先輩に惚れてるか表現できるのに。そんなんじゃ足りなくて、もどかしい。
「…万谷くんて、ほんとに彼女とかいなかったの?」
「いないっすよ。モテないし」
「さらっと『可愛い』とか言えちゃうの、なかなか出来ないと思うんだけど…」
「俺はあの、自分に正直なんで、良くも悪くも正直な言葉が出ちゃうっていうか…。気を付けないといけないんすけどね」
自称毒舌キャラみたいに、人のこと何も考えない無神経でいたいわけじゃない。
「そっか。嘘がないから、万谷くんのそばは居心地がいいんだね」
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