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第54話

初めて入ったうどん屋は、こぢんまりしていて居心地のいい雰囲気だった。 2人で天ぷらうどんを頼んで、熱さにはふはふしながら食べる。先輩がうどんあんまり上手にすすれないのすげぇ萌える。 「先輩、麺すするの苦手なんすね」 「違うよ、太いから」 確かにちょっと太めのうどん。でも食べ応えあるしコシもあって旨い。天ぷらも、衣が厚すぎなくて好きな感じだし。万亀誘ってまた来よう。 「ラーメンとかはすすれるんすか?」 「じゃあ今度食べに行こうよ。すすれるとこ見せてあげる」 「楽しみにしてます」 「…疑ってる?」 「そんなことないです」 麺すすれてもすすれなくても、どっちにしても可愛いことに変わりない。ちゅるちゅるちまちま口の中に入ってくのがすげぇ可愛い。この動画ほしい。これ見ながら飯食えるわ。 うんまぁ、そんなこと思ってる時点で変態だけどな! 気っ持ち悪!! 「この後靴見に行く?」 「そーですね。ってか先輩、何か買いたいものもとか見たいものありますか? 俺の都合ばっかりだし」 「んー…駅ビルちゃんと見るの初めてだし、どこに何があるか分かんないから教えてくれる? 服ちょっと見たいかも」 「メンズの服屋いくつか入ってたんで、見てみましょっか」 「うん」 頷いて、先輩がまたちゅるちゅるうどんを食べ進める。少し突き出された唇が目を惹いて、俺は慌てて視線を逸らした。食べてるとこガン見してたらそれはほんとに変態。 でもかわいーなー。唇柔らかそーだなー、とか思っちゃうよなー。 触れたい、とか。思ってしまう。 思わず自分の唇を、すり…となぞってしまう俺は末期だと思う。 先輩の唇の柔らかさが知りたいです。変態ですみません。 俺がそんな葛藤をしているうちに、先輩は「ご馳走さまでした」と箸を置いた。 食べてるとこもうちょっと見てたかった…とか思った正直な変態は俺です。 「美味しかったですね、ここ」 「うん。史生くんにお礼言わなきゃ」 「もうちょっと寒くなったら鍋焼うどんとかも食べてみたいな」 「いいねぇ、鍋焼き」 壁にかかったメニューを見上げながらそんな話をして、「ご馳走さまでした」と会計を済ませて外に出る。食べてる間も結構人が入ってきたから人気の店なんだな。 「八月朔日先輩って、地元先輩と一緒ですよね? この辺の店詳しいんですね」 「史生くんね、お母さんの実家がこっちなんだって」

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