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第55話
「あ、そーなんっすね」
「うん」
「ってか先輩、地元どこですか?」
「俺はねぇ、西中市」
隣の市だったのか。
「電車だと、ここまで20分くらいっすか?」
「そうだね。最寄りが中駅なんだけど、家まで歩いて15分くらいかな。万谷くんは自転車だよね。学校まで何分くらい?」
「30分ちょっと…ですかね」
「そっかぁ。脚 筋肉ついた?」
「そっすね。行きは上りばっかなんで。あ、触ります? 太もも」
「え、いいの?」
「いーっすよ。クラスのやつら、ふざけて触ってくるし」
先輩が控えめに俺の太ももに触れた。
あ、これってセクハラになる? 無理に触らせた感ない? 大丈夫?
「わ、ほんとだ。固いね」
先輩の手の感触…、とか思う俺気持ち悪い。
「先輩、手も綺麗っすね」
「えっ」
「指細くて長いし。指の太さ俺と違くないですか?」
先輩の隣に手を広げて見せると一目瞭然。
俺より一回りくらい小さい先輩の手は、指がすらっとしててすごく綺麗。
「あれ? 俺今気持ち悪いこと言いました? 大丈夫っすか?」
「え、大丈夫だよ」
「気持ち悪かったらちゃんと言ってくださいね」
「なに、それ」
先輩が可笑しそうに笑う。俺の胸は条件反射みたいにドキドキ高鳴って、苦しくなった。
ほんとにずっと隣で見ていたい。これからだって、先輩の色んな表情が見たい。
可愛いと好きで頭がいっぱいになる。
「万谷くん、手大きいね。俺と身長違うから当たり前かぁ」
そう言って、先輩はちょっと俺の手に触れた。
触れられたところが、じわりと温かくなった気が、した。
「爪の大きさ違う」
「ほんとだ。先輩の爪可愛いですよね」
「そっ、そうかなっ」
お互いの小指がくっついて、心臓が内側からドンドコすごい勢いで胸を叩く。これ、先輩に聞こえてないかな、大丈夫かな。
あぁ、苦しい。苦しいけど、やばいくらい嬉しい。小指くっつけただけなのに。
先輩のこと好きすぎて、いよいよ自分がやばい自覚はある。気持ち悪い方の『やばい』ね。
「あ、えっと、駅ビル、行きましょうか」
「あ、うん」
俺だけめちゃくちゃ意識してる感じがして、ちょっとだけ悔しい。悔しいけど、それが切ないけど、でも何か…嬉しい。
俺多分、先輩に振り回されたい。
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