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第59話

「…今日、万谷くんがいてくれて、良かった。ありがとう」 「俺は…」 本当は、毎日、いつだって、先輩に頼られる存在になりたい。先輩を守るのは俺がいい。それくらい、想ってるけど。 「…先輩の役に立てて、俺も良かったです」 「た…頼りにしてる、って意味なんだけど…」 「えっっ、お、いいんすか、俺で。いや、光栄です」 「…………何で伝わんないのかなぁ…」 「え?」 何? 俺? えっ、そんな…先輩の気持ちを察せてない、だと…? 「…万谷くん」 「はい」 「もうちょっとこうしてても、いい…?」 「光栄です」 心臓やばいけど。爆発しそうだけど。 でもこの世の幸せを一身に受けてる感じがしてるからいい。光栄です。 俺はしばらく先輩の背中をあやすようにとんとんしながら煩悩を殺して過ごした。抱き締めたい。 「ごめんね。落ち着いた。ありがとう」 「俺もいい感じに落ち着きました。(煩悩が)」 「??」 「そしたら服見に行きましょう」 「うん。あの、」 先輩が俺のパーカーの裾をきゅっと引っ張る。 えっ、かわい! 「万谷くんが、俺に似合うの選んでくれる?」 「ひぇっ…」 喉から悲鳴が出た。 「俺、俺の服はほぼほぼ兄のお下がりでしてですね、決して、決して俺にセンスがあるとかではなくてですね、清瀬先輩に恥をかかせるわけには…」 「似合う色選んでくれればいいんだけど」 あー、首傾げて不満げなのかわいー!! 何してても最高に可愛い!! ダメだこれは! 攻撃力が高すぎる! 「先輩…先輩は自分の殺傷能力の高さを自覚してから俺に物を言ってください…」 「えっ、何?」 「そんな可愛過ぎるの断れるわけないじゃないですか…」 「えっっ」 俺は天を仰ぐことしかできない。先輩の前では無力だ。 「はぁー…ヤバい…」 「ぅあー…ずるい…」 あれ? 先輩、今ずるいって言った? え? 誰が? 俺? ひとまず3階へ移動。確か前に兄ちゃんに連れてきてもらった服屋があったはず。高校生に買えるくらいのリーズナブルな店。 どこだっけなー、と思いながら、とりあえずフロアを回ってみる。 「気になる店あったら言ってくださいね」 「うん」 ぺら、と値札を捲りながら頷く先輩。今のTシャツだけで3000円超えてた…! 1000円くらいでいいだろ、Tシャツ。ダメなの? 670円のTシャツ普通に着るけど。え、ダメ?

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