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第62話
「…そう、かな…」
「だってクソと付き合ってたの万谷くん知ってるけど、性別のこと何にも言わないじゃん。谷口と違って」
「それはそう」
肯定が早い。
そして真下のこと『クソ』って言ったのに何の反応もしなかった。
「でも、涼輔と別れてまだ2週間位だし…。軽いって思われないかな…」
「ひどいつきあい方だった、って万谷くんは思ってると思うな。すいちゃんだって、ある意味クソに毒されてたと思うし、今はちゃんと目が覚めてるんだよ。あと、クソなんかどーでもよくなるくらい、魅力的な人に出会ったってことでしょ~」
って言うかさぁ、どう見ても、万谷くんはすいちゃんのこと好きでしょ。LOVEでしょ。超LOVEでしょ。でもなぁ…。
何でか最初から諦めてるんだよね。何で?
「万谷くんのどんなとこが好きなの?」
にやにやを隠さずすいちゃんを見る。
すいちゃんは頬をほんのり染めて俺を睨んでる…つもりなんだろうけど可愛いんだよな~!
迫力はないよね。破壊力はあるけど。
たまたま廊下を通って被弾したやつが、「うぐ…ッ」って呻いた声が聞こえた。御愁傷様。
「…史生くんは面白がってるから言わない」
「だって楽しくてにやにやしちゃうんだもん。俺はすいちゃんの幸せな話ならいくらでも聞くよ」
「でも万谷くん、伝わらないからなぁ…」
「察しが良いのに鈍感だよね」
はっきり言っちゃった。
「…鈍感なのも可愛いと思うんだけどね」
「っはぁ~!」
「何その反応…」
「すいちゃんから惚気を初めて聞いたと思って」
「っの、のろけじゃないっ」
惚気でしょ。自分より大きい男を可愛いと思うんだから。
「何で伝わんないのかなぁ、って思うんだけど…可愛いって言ってくれたり、すごく嬉しいこと言ってくれたり、髪撫でてくれたりするから…今はいいんだ。これで」
「今は?」
「万谷くん、自分のことモテないって言ってたし、今好きな人いなさそう」
いるよ。すいちゃんだよ。
こっちも何で伝わんないのかなぁ。これ、どっちかの背中押したら爆速でくっつくじゃん。
万谷くんなら、すいちゃんのことすごーく大事にしてくれそうだし。俺は安心して見てられるけど。
「…どうやったら意識してもらえるのかな…。年上は好きみたいなんだけど…」
「うーん…」
万谷くん、すげー意識してると思うけど。すいちゃんのこと、すごい好きだよ。意識しまくりだよ。きっと。
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