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第64話
「史生くん」
「なーに?」
「ありがとうね。涼輔とのこと、本気で怒ってくれて」
「だって大事な可愛いすいちゃんだからね」
なに、それ。って、すいちゃんが柔らかく笑う。
ほんとにいっぱい笑うようになったなぁ。嬉しい。余計な虫がつきそうだけどーーっていうか多分、確実につくと思うけど、それでも。笑っててくれる方がずっとずっと可愛いからね。
「傷つくのも必要だったのかも知れないな、俺には」
「そう?」
「うん。万谷くんと一緒にいて、何て言うか…あぁ、こういうの楽しいんだなー、とか。自分ってこういうの好きなんだな、とか、何か色々、思うところがあって。それは、涼輔と一緒だと気づかなかったことだから。自分で自分が分からないって、ちょっと情けないけど」
「それはきっと、万谷くんの前では素の自分でいられるってことだよ。大事なこと」
「うん」
「良かったねぇ」
「うん」
このまま上手くいくといいなぁ。いっぱい応援するからね!!
その時俺のスマホがピロリンピロリン鳴った。あ、2人からLINE返ってきたかな。
すいちゃんに、「ちょっとごめんねー」って断ってスマホを確認。
「あ、万谷くんいいって。一緒にお昼食べるの。万亀くんも」
「ふ、ふーん」
わざと気のない返事しちゃうすいちゃん可愛い。多分、どう反応していいか分かんなかったんだろうな。
「あ、ごめん。俺もLINE」
すいちゃんのスマホもピロンと鳴って、画面を確認する。けど、すいちゃんはすぐにスマホを机に伏せた。
「返事しなくていいやつ?」
「うん。大丈夫」
公式アカウントかな。たまにうざいのあるよね。
「ところでチカちゃんには万谷くんと出掛けたの言ったの?」
「うん。昨日ね。別の用事あったから、ついでにLINEで」
「反応は?」
「根掘り葉掘り聞かれた」
「懲りてねぇな」
チカちゃん俺より過保護だから仕方ないんだけど、それにしてもなぁ。すいちゃんに近づくやつ全員敵認定するんじゃないよ。
「シノくんにちゃんと言った方がいいよね」
「何て?」
「………万谷くんのこと、いいな、って思ってるから、ちょっとだけ見守ってて欲しい、って」
「うん。そうだね」
その辺分かってそうで分かってなさそうだもんな。
「ところでそのチカちゃんは?」
「週番だから先生のとこ」
「あー」
いつもいるのにいないから、どうしたのかなとは思ってたんだよね。おかげで万谷くんとのこと聞けて良かったけど。
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