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You captivate me

八月朔日先輩に急に誘われた昼休み。 俺は清瀬先輩と一緒に食べれることより、ーーもちろんそれも嬉しいんだけどーー清瀬先輩が食べてるとこを見るのが好きな変態だから即OKをした。 万亀に席を取っておいてもらって、先輩たちとカウンターに並んで食事を運ぶ。それで椅子に座るじゃん? それで… 「………」 「………」 「………」 「………」 「………」 何で椅子に座って食べ始めた瞬間に誰も何も喋らなくなるの?? シノギダ先輩が無言なのは分かる。さっきもそんな喋ってなかったし。けど八月朔日先輩! 嘘でしょ。椅子に座るまで結構喋ってたじゃん! 何? 日本人だから食事中は喋らないの?? でもバーミャンで会った時わりと喋ってたよね? そんで万亀も何で無言なの?? 俺と食ってる時よく喋るじゃん! 何で? と思って万亀をじっと見てたら、万亀も何だかちょっと困惑してた。よかった、俺だけじゃなくて。 清瀬先輩は? と思って清瀬先輩を見ると、先輩も何となく不思議そうな顔をしてた。可愛い…じゃなくて、よかった俺だけじゃなくて。 でもこれは多分誰かが何か喋らないと、この微妙に変な空気が食べ終わるまで続くんだろう。ってか食べ終わってからもこれだったらどうすればいいわけ? ってゆーか八月朔日先輩、誘ったのに何も喋らんて何これ。何なの? 何が目的なの? 「……あの、万亀…えっと…今日のA定、鯖…?」 どうにも沈黙に耐えられなくて、見れば分かるようなことを聞いてしまう俺。っていうか知ってる。運んできたの俺だもんね。 「ウン、サバ。シオサバオイシイヨ」 おい万亀!! 何でカタコトなんだよ! AIだってもっと流暢に喋るわ!! 雰囲気に呑まれるな! 「あ、そう…」 はい、会話終了~。 「えっと…清瀬先輩、えーっと…コロッケ美味しいですか…?」 もう何喋ればいいの俺!! 黙って食ってればいい? 「あ、うん。美味しい。1ついる?」 よかった! 先輩は流暢!! 「あ、じゃあハムカツ1つどうぞ」 「ありがとう~」 日替りメニューのハムカツと、先輩のコロッケを交換。 「俺、ハムカツ初めて食べる」 「そうなんですか? 学食の、チーズ挟まってて美味しいですよ」 「あ、ほんとだ。チーズ入ってる」 先輩のおかげでちょっと和やかになったんでは? 先輩、ほんと天使。

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