69 / 81

第69話

「あ、そうだ。万亀」 「んあ?」 「この前、八月朔日先輩にうどん屋教えてもらったから今度一緒に行こーぜ。美味しかった」 「史生先輩と出掛けたの?」 あ、よかった。流暢になった。 「じゃなくて、清瀬先輩と出掛けた時に入ったとこが、八月朔日先輩が教えてくれたうどん屋」 「あー、そっかそっか。千景、清瀬先輩好きだもんね!」 「んブボッ!!」 「ゴッフ!!」 「っ、げほッ」 「えっ!? 千景、先輩たちも…大丈夫ですか?」 待って。俺が噎せるのは分かるけど…八月朔日先輩何で噎せた? 清瀬先輩の噎せ方は可愛い。俺と八月朔日先輩の噎せ方の汚さよ…。 そんで万亀、心配してくれるのは分かるんだけど、背中叩く力が強い! 「ゴホッ、万亀、ちょ、うぇっ」 「ちょっと千景、一番大丈夫?」 「っち、からがっ…強い!」 「マ? ごめん」 痛いし苦しいし、踏んだり蹴ったりなんですけど。 「けど千景と清瀬先輩、仲良しだよね! 最近よく清瀬先輩の話するんですよー。真下先輩のことあんまり好きじゃなかったもんね、千景。好きで仲良くできる先輩できてよかったじゃん」 あ、『好き』ってそういう…。万亀に核心突かれたかと思ったわ、ほんとに。 「ゴホッ、そうだな…」 「でしょー? ってか史生先輩すげー噎せてたけど大丈夫?」 「平気平気!」 食べ始めてから初めて喋ったな、この人。しかしシノギダ先輩、一言も喋らねぇ。 「清瀬先輩、大丈夫ですか?」 「っん、大丈夫! ありがとうね」 ちょっと焦ってる先輩可愛い…! 「びっくりしたー。3人で急に噎せるんだもん」 「悪かった」 万亀のせいだけどな、俺のは。 「…ふふっ」 不意に、清瀬先輩が何か思い出したように吹き出した。 「ごめん、あの、万谷くん初めて会った時も噎せてたな、と思って」 「あー…言われてみればそうっすね」 でもあれは…。 「先輩が、飲み物交換する? って言うから」 「えぇ~? 俺のせい?」 そう言いながら、清瀬先輩はけらけらと楽しそうに笑った。それがあまりにも綺麗で可愛くて、胸が温かくなって幸せで。俺が笑わせてるならいいや、って、図々しくもそんな風に思って、俺も笑った。 「万谷くん、コーヒー得意じゃないんだよね」 「先輩も、ミルクティーそんな飲まないんすよね。似合うのに」 「2人にしか分かんない会話って、すげー仲良しって感じでいいね!」 「万亀くん、ちょっとシッ!」

ともだちにシェアしよう!