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第69話
「あ、そうだ。万亀」
「んあ?」
「この前、八月朔日先輩にうどん屋教えてもらったから今度一緒に行こーぜ。美味しかった」
「史生先輩と出掛けたの?」
あ、よかった。流暢になった。
「じゃなくて、清瀬先輩と出掛けた時に入ったとこが、八月朔日先輩が教えてくれたうどん屋」
「あー、そっかそっか。千景、清瀬先輩好きだもんね!」
「んブボッ!!」
「ゴッフ!!」
「っ、げほッ」
「えっ!? 千景、先輩たちも…大丈夫ですか?」
待って。俺が噎せるのは分かるけど…八月朔日先輩何で噎せた?
清瀬先輩の噎せ方は可愛い。俺と八月朔日先輩の噎せ方の汚さよ…。
そんで万亀、心配してくれるのは分かるんだけど、背中叩く力が強い!
「ゴホッ、万亀、ちょ、うぇっ」
「ちょっと千景、一番大丈夫?」
「っち、からがっ…強い!」
「マ? ごめん」
痛いし苦しいし、踏んだり蹴ったりなんですけど。
「けど千景と清瀬先輩、仲良しだよね! 最近よく清瀬先輩の話するんですよー。真下先輩のことあんまり好きじゃなかったもんね、千景。好きで仲良くできる先輩できてよかったじゃん」
あ、『好き』ってそういう…。万亀に核心突かれたかと思ったわ、ほんとに。
「ゴホッ、そうだな…」
「でしょー? ってか史生先輩すげー噎せてたけど大丈夫?」
「平気平気!」
食べ始めてから初めて喋ったな、この人。しかしシノギダ先輩、一言も喋らねぇ。
「清瀬先輩、大丈夫ですか?」
「っん、大丈夫! ありがとうね」
ちょっと焦ってる先輩可愛い…!
「びっくりしたー。3人で急に噎せるんだもん」
「悪かった」
万亀のせいだけどな、俺のは。
「…ふふっ」
不意に、清瀬先輩が何か思い出したように吹き出した。
「ごめん、あの、万谷くん初めて会った時も噎せてたな、と思って」
「あー…言われてみればそうっすね」
でもあれは…。
「先輩が、飲み物交換する? って言うから」
「えぇ~? 俺のせい?」
そう言いながら、清瀬先輩はけらけらと楽しそうに笑った。それがあまりにも綺麗で可愛くて、胸が温かくなって幸せで。俺が笑わせてるならいいや、って、図々しくもそんな風に思って、俺も笑った。
「万谷くん、コーヒー得意じゃないんだよね」
「先輩も、ミルクティーそんな飲まないんすよね。似合うのに」
「2人にしか分かんない会話って、すげー仲良しって感じでいいね!」
「万亀くん、ちょっとシッ!」
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