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第70話

っていうか、八月朔日先輩が謎。何で万亀を黙らせようとするのか。ちょっとシッ! って何? 「あ、ねーそう言えば先輩たちもうすぐですね、修学旅行」 修学旅行!! そう言えばそんなんあったな!! えっ、俺その間 清瀬先輩に会えないの…? 「今年はどこ行くんですか? 去年は台湾だったって聞きましたけど」 「今年はねー、日本国内。世界情勢色々あるからねぇ」 「あー、テロとか怖いですもんね」 ウンウン、って頷きながら、万亀が鯖をほぐしてる。 ってか八月朔日先輩、ふつーに喋ってんじゃん。 「台湾も行きたかったなぁ」 清瀬先輩が何となく呟いた言葉に俺は頷いた。 「いいっすよね、台湾。俺 海外行ったことないから行きたいな」 「万谷くんとだったらどこでも楽しそうだねぇ」 どこかでドギュンッてすごい音がしたと思ったら、俺の心臓が疾走してた。胸の中で大暴れしてる。 苦しい。のに、嬉しい。心臓頑張りすぎて、死ぬかも。 その前に嬉しすぎて吐きそう…。待って俺。ハムカツまだ残ってるから吐くのはやめて。ほんとに。 「…胸がいっぱいで吐きそう…」 「嘘でしょ千景。吐くのはやめて」 「呑み込んでるからちょっと話しかけないで…」 「万谷くん、大丈夫…?」 「大丈夫です。清瀬先輩は話しかけてください」 「えっ差別」 「万亀は黙って」 「差別!」 清瀬先輩に背中をさすられたい人生だった。 はぁ~自分が気持ち悪い。 「で、先輩たちどこ行くんですか?」 万亀が俺の背中をさすりながら聞く。 「差別してごめん。万亀はこんなにいいやつなのに…」 「いいってことよ!」 「声のボリュームは下げて」 「2人、漫才みたいで面白いね。今年は沖縄なんだー。お土産買ってくるから期待してて! ちんすこうでいい?」 「史生先輩、俺サーターアンダギーがいいです!」 他にもあるだろ、沖縄。紅いもタルトとか、雪塩サンドとかあるじゃん。あれ旨そう。 「琉球ガラスも綺麗だよね」 先輩綺麗だから綺麗なもの似合うよな…。 修学旅行。修学旅行かぁ…。 同じ学年だったら、一緒に行って、一緒に観光とかする機会もあったのかも知れないけど。1つしか違わないのにその違いが憎い。 「清瀬先輩」 「なぁに?」 「沖縄の海の写真送ってください」 「いいよー。頑張って上手に撮るね!」 可愛いなぁ。すごいニコニコして。 修学旅行、そりゃ楽しみだよな。…真下先輩も、一緒なんだよな。

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