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第71話
ちくりと胸が痛む。
これは嫉妬。どうしたって、嫉妬だけは一人前にしてしまう。
あと何かこう…修学旅行ってカップルできたりするし。もしもまた…2人がーーって、それはないか。彼女たくさんいすぎたのが原因みたいな感じだし。
けどそれって、裏を返せば付き合ってるのが清瀬先輩1人だけだったらまだ一緒にいたかも知れない、ってこと、だよな…。
いや、まぁでも…結局今は別れてるから、かも知れないって考えたところで別に変わったりしないか。
…清瀬先輩は、真下先輩のこともういいって言ってたけど…本当は、どうなんだろう。本心で『もういい』のか、それとも…。
「万谷くんたちの時はどこになるんだろうねぇ、修学旅行」
「あ…どこ、ですかね。北海道とかもいいけど…秋はもう寒そうっすね」
「千景、北海道がいいの? 俺あったかいとこがいいなー。台湾行けたらいいね」
「そうだな。ってかパスポートねぇし」
「俺もないー」
そんでシノギダ先輩マジで喋らん。そろそろ何か喋ってよ。『あ。』とかでもいいから。ちょっと不気味なんだよ、無言なの。
俺と清瀬先輩が親しくすんの嫌がってたじゃん。
そう思ってシノギダ先輩をちらっと見ると、先輩は真剣な面持ちで俺を見ていた。
俺は何の吟味されてんの?
「学年違うと、色々…一緒に何か、っていうのがあんまりないよね」
清瀬先輩の声に、俺はそっちに視線を向ける。
「そう、ですね」
俺もさっき同じこと思ってた。
「1つしか違わないのにね。…ちょっと淋しいね」
「っ」
俺だけじゃなくて、先輩もそんな風に思ってくれることが嬉しい。
先輩の隣に居てもいい、って思ってくれてるのかな。そうだったらいいのに。
「学校の外で、いっぱい遊びましょ。一緒に出掛けるのは、修学旅行じゃなくても出来るし」
「…うん。そうだね」
花がほころぶように、先輩がふわりと笑う。この笑顔が好きだ。華やかで綺麗で、温かくて優しくて。ずっと隣で見ていたいって思うくらいに。ずっと俺が、笑わせたい。そんな我が儘を、思ってしまうくらいに。先輩が好きだ。
学生の1年って、何でこんなに大きいんだろう。社会人の従姉は、2つ年上の人と対等に付き合ってる。大人の2年なんてそんなに大きな差じゃないって思えるのに。
俺には清瀬先輩との1年が、すごく大きくて、遠くて。手を伸ばせば、すぐそこに、触れられる所にいるのに。
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