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第73話

「んじゃあまぁ、俺行きますけど。ケンカしないでくださいね」 「突っかかってきてんのあいつらだからな」 「清瀬先輩と仲良いんだからそれは仕方なくないっすか?」 「すいが俺のこと好きだったんだけど?」 …嫌な言い方だな、こいつ。 「…真下先輩だって好きだったんでしょ。好きじゃないのに付き合います?」 あ、でも諏訪野さんが言ってたな。真下先輩の好きなとこは顔だって。真下先輩も、相手の顔とか身体とか、そういう感じだって。 清瀬先輩、ほんとにびっくりするほど綺麗だからな。 「別れたって話しかけてもよくね?」 「まぁ、そりゃそうですけど。先輩の場合は周りもよくないから」 「はー? 周りぃ?」 「谷口先輩」 「あー…、……」 黙るな。 「つかあいつ別に俺がどうこうするやつじゃねーし」 「だとしても、っすよ。好きにさせてるから」 「俺のせいかよ」 「だって先輩の腰巾着でしょ」 あ、やべ。本音。 思わずこぼれてしまった本音に、真下先輩がちょっと目を見開いた。 「おま、」 「あーすみません。失言」 「何、そんな風に思ってたんだ?」 ニヤニヤ笑うな。 「谷口先輩には内緒にしてくださいよ」 「しょーがねぇな~」 やっちまった。まぁいいけど。別にあの人怖くないし。 「じゃあ、俺まだハムカツ残ってるんで」 「今日何頼んだ?」 「日替わりっす」 「俺もそれにしよ」 食券買ってなかったんかよ。 「そう言えば谷口が土曜日に千景に会った、っつってたな」 「あ、そうそう。新しい靴買ったんすよ、見ます?」 「見ねーよ。待ち合わせしてたって?」 「そうですけど。あ、諏訪野さんに会いましたよ」 「あぁ、マミな」 「先輩、付き合う人数減らしてんすか?」 「関係なくね?」 「ないっすねー。じゃ」 何か変に突っ込まれそうで嫌な感じがしたので、強引に話題を変えて先輩が答えたくないこと聞いてさっさとずらかるが良し。何となくだけど、清瀬先輩と出掛けたことは言いたくなかった。 テーブルに戻れば、「万谷くん、ごめんねー」って八月朔日先輩に謝られた。 「や、先輩のせいじゃないですし」 どっちかっていうと、真下先輩のせい。清瀬先輩に構うな! と思ってしまうのは俺の勝手なんだけどさ。でも嫌だ。 「…悪かったな」 「え、あ、いえ…」 シノギダ先輩に謝られた…! 失礼なのは承知でびっくりしてしまう俺。 「千景すげーね。俺全然動けなかったわ」 「うーん…これはまぁ、真下先輩への慣れみたいな…」

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