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第75話
「万谷くんとすいちゃんはまだ名字で呼び合ってるよね」
「え、あ、まぁそうっすね」
おそれ多いんで。
「万亀くんみたいに、俺のこと『史生先輩』って呼んでもいーよー? チカちゃんのこと『チカちゃん先輩』とか!」
「シノギダ先輩は『チカちゃん先輩』でいいんすか?」
「よくはないな」
ほらぁ。ご本人よくないって。
「可愛いのに」
「そう思ってるのは八月朔日だけだ」
やれやれ、みたいな呆れ口調のシノギダ先輩。
清瀬先輩のこと、下の名前で呼ぶなんておそれ多いけど…でもなぁ。いつかは、すい先輩って呼んでみたい。
真下先輩が『すい』って呼ぶより、俺の方が大事に呼ぶから。
「千景もチカちゃんになるよね」
「言われてみれば」
確かにそうだ。
「でも、千景って呼ばれることが多いな。今までも」
「俺も千景って呼んでるしなー」
「万谷くんと飴宮くんって仲良いけど、中学から一緒なの? それとももっと前から?」
ふと思ったように、清瀬先輩が口を開いた。
「それが、千景とはここ入ってから知り合ったんですよー」
「「「えっ」」」
先輩たちみんな同じ驚き方してる。目をくりっとさせた清瀬先輩が可愛い。
「あ行とや行で元々席離れてたんですけど、担任が最初の週番組む時に最初と最後から1人ずつ組んでったんですよ。で、俺が頭から2番目で、千景が後ろから2番目だったので一緒に組んで、それで何となーく馬が合って。一緒にいると結構楽だし楽しいし。たまにズバッて切り込んでくからハラハラする時もありますけどー」
「それはすまん」
俺が万亀にハラハラさせられることって………うん、ないな。これからは気を付けよう。なるべく。
「中学の時の友達より、千景の方が何かすごく気が楽。話が伝わりやすいって言うか…言いたいことお互いすぐ理解できるって言うか…う~ん…そんな感じ」
「あー、でも何となく分かるかも」
八月朔日先輩がそう言って頷いた。
その感覚は分からんでもないな。波長の合う合わないはあるもんな。これはもう、ほんと相性だと思う。
「俺、中学あんまり楽しくなかったから」
「あぁ、言ってたな。そう言えば」
「え、じゃあ万亀くん今度一緒に遊ぼうよー。めっちゃ楽しませてあげる! 万谷くんが!!」
「俺かよ!!」
力強い宣言に条件反射で突っ込むと、八月朔日先輩の両隣が思わずと言った感じに吹き出した。
シノギダ先輩の笑うとこ初めて見た。
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