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第76話
「だいじょーぶ。千景はいつも楽しいよ!」
「俺を楽しいって言うのは万亀くらいなんだよなぁ」
「えー? すいちゃんもそう思ってるでしょ?」
ちょっと八月朔日先輩、清瀬先輩に振るのやめてください。楽しくないって言われたら俺多分地中に埋まるくらい凹むから。
「俺? 万谷くんといるの楽しいよ」
ぁぁあありがとうございますッッ!!
「ありがとうございます」
狂喜乱舞する心の中の自分を押さえて、紳士的に微笑む俺。やればできる子!
「まのつくクソとどっちが楽しい~? って、聞くまでもないね~」
まのつくクソって言った、この人。
「まの…えっ?」
混乱してる清瀬先輩も可愛いなぁ。和む。
「まのつくクソって真下先輩のこと?」
万亀がこそっと聞いてくる。
「多分ってか絶対そう」
「世界で一番嫌いだもんね」
「今のところな」
「真下先輩が何やらかしたかすごい気になるなぁ」
それは俺の口からはちょっと。
清瀬先輩と真下先輩のことは、俺が勝手に言っていいことじゃないしな。個人情報保護。
俺たちはしばらく喋ってから、予鈴が鳴る前に食堂から出た。先輩たちとは棟が違うので、別れる前に清瀬先輩と放課後の約束をする。
「玄関で待ち合わせでいいっすか?」
「うん」
「俺が先に来れればいいんすけど…」
「待つくらい出来るよ?」
「あ、そっか。ここ学校か」
つい、この前の土曜日のことが頭に浮かんでしまった。先輩がナンパされてたアレ。
「ふふっ、どこと間違えたの?」
「や、あの…ちょっと、この前のこと思い出しちゃって…」
「この前?」
「靴屋で…」
「あ、あー…」
あれかぁ。って先輩が呟いた。
「嫌なこと思い出させてすみません。ここ学校だから、あんな変なのいないっすよね」
何を勝手に心配してんだ、俺。
「え、っとさぁ…」
ちょん。と、先輩の指が俺の袖を控えめに引っ張った。めっっっちゃ可愛い!!
「あの…む、迎えに、来てくれても…いいよ…?」
「可愛い…」
「えっ?」
「何でもないっす!」
心の声漏れてた!!
えっ、ってか先輩、今 何て言った?
「あっ、えっ、俺、俺が先輩…あっ?」
あっ、そうか!
「そっか。教室まで行けばいいんすね」
「えっ、ほんとに?」
「じゃあ授業終わったらLINEしますね。んで、俺先輩のクラスまで行くんで待っててください」
「あ、うん…。来て、くれるの…?」
「もちろん」
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