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第78話
「……俺をおだてて何がしたい」
「何その疑心暗鬼」
万亀はそう言って笑う。
「ってか、性別については何も言わねーのな」
「だって千景、気にしてないでしょ。それに、性別くらいで人のことごちゃごちゃ言うの俺嫌いだもん」
「まぁ、そうだな」
その辺の価値観は、万亀と俺は似てると思う。だから一緒にいて楽なのかな。
「って言うか俺、正直恋愛の『好き』ってまだよく分かんないから、あんまり色々言いたくないのもあるし。本人が気にしてないのに外野が色々言うのおかしいと思ってるし」
「それは確かにそう」
「だから今は千景の恋路を見守ろうと思って」
にこーっと笑う万亀。
「…先輩の話してもいい?」
「いいよー。ってか今さら」
「えっ、俺そんなに先輩の話してた?」
「割と。自覚なし?」
「割と」
「やばいね!」
やばいんだ。
「えっ、可愛いとか言ってた?」
「それは言ってないけど…思ってるんだね」
「墓穴掘ったわ」
「だね」
力強く頷くのやめろ。
「千景は先輩のこと、可愛いって思ってるんだ」
「可愛いけどそれだけじゃなくて、まずすごい綺麗だし、見た目もだけどそれ以上に中身も綺麗だし、それで可愛いところもあって、綺麗なのに可愛いとかずるいし、ずるいんだけどそこがまた魅力と言うか」
「ごめん、それ長くなる?」
「聞けよ!」
長くなるに決まってんだろ!
「千景って清瀬先輩のことになるとIQ下がるね」
「エッ」
「恋愛するとIQ下がるの?」
「やめろ。IQ上げるから」
「上がるかなぁ」
「やめろ」
そんな自分知りたくなかった。
「でも先輩の前ではIQ下がらないよなぁ。何かこう…浮き足立ってる心を抑えながら一緒にいるって言うか…好きな気持ちを自制してるって言うか…そんな感じ」
うーん。合ってるかも。
「万亀って俺のこと割と見てんのな」
「だって雰囲気違うからね!」
「そんな分かりやすい?」
「んー…俺はほぼ毎日かかわってるから、違いが分かるのかも? でも雰囲気は柔らかくなったと思うよー?」
「………先輩に、気づかれてたり、とか…」
「清瀬先輩は絶対気づいてないと思う。史生先輩たちは…気づいてるかもだけど」
前半すごい確信持って言ってない? 気のせい?
「けど自分にストップかけてる分、分かりづらいところはあるかもね。あからさまにアピールとかしないし、でも清瀬先輩にとってはそれくらいがいいのかも」
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