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第7話

 しかし、昼下がり。いよいよ家に帰るとなった段で、直貴が駄々をこね始めた。 「帰りたくない」 「制服とか教科書とか、月曜日どうするの?」 「ちょっと遅刻する。親が仕事行ったあと家帰って、それから行く。ダメ?」 「きょうは我慢。ここはきちっとしないと、今後預かれなくなっちゃうよ」 「エッチしてくれたら言うこと聞く」  内心、ため息をついた。  どうしてこの子は、こんな風にしか人を繋ぎ止められない人生を歩んできてしまったのだろう。  本当に普通の子なのに、かえってそれが痛々しい。 「……シャワー、一緒に浴びようか」  どんどん決意が揺らいでいく。  絶対に他人に渡したくなくなっている。  僕だけが優しさをあげられればいいと思っている。  こんなのは毒なのだろうと、知りながらも。  直貴はうれしそうに「だいすき」と言い、機嫌良く浴室に向かった。 「ねえ、体洗って。手で直接」  ボディーソープで滑らせて体のあちこちをなでると、直貴は呼吸を荒げた。 「あ……、ぁ、ん……っ」 「気持ちいい? ぬるぬるするの」 「……ふ、ぁ、きもちぃ……っ」  胸、尻、腹。  薄い体の表面をなぞると、息を切らして喘ぐ。 「は、……朋之さん。ちんちん触られてないのにヒクヒクする」 「気持ちいいんだね」 「ぁん、……っ、ぁ……」  直貴は甘ったるい声を漏らしながら、僕のペニスに触れてきた。 「朋之さんも、俺のしごいて。一緒にしよ?」 「僕はいいよ」 「んーん、朋之さんにも気持ち良くなってもらいたいよ」  ぬるりと触れてきた手つきに、思わず息を詰めた。  手慣れている……というのが正直な感想。  思えば思うほど、この華奢な体を、自分のだけものにしてしまいたいと思う。 「は……、」 「あう、朋之さん、きもちぃ」 「……っ」 「んぅ、イッちゃいそう……」 「いいよ、イキたかったら」 「ダメ。俺が先にイッたら朋之さんやめちゃうもん。イッて……、気持ちいい顔見たい」  ぐちゅぐちゅとくぼみをこねるようにしごかれて、昨晩途中で止めたのもあり、ダメだった。 「……、…………っ……!」  情けなく、生徒の手の中に吐精した。  どろりとした精液が、ボディーソープに混じって床に落ちる。 「……っ、はぁ、は……」  呼吸を整えていると、直貴はうれしそうに目を細めた。 「ん、朋之さんのエッチな顔見て、興奮しちゃった」 「イキたいよね。してあげる」  スパートをかけると、股間のボディーソープがぶくぶくと泡立ち、滑るペニスがシャボンで隠れる。  直貴は足をガクガクと震わせながら、嬌声を上げる。 「ぁんっ、……あぁ、っ、も、……ん、イク……」 「いいよ。気持ちよくなって」 「……あ、……ぁあ、あ、いく、いくっ……ッ……!……ぁああッ……!……っ」  弾けた直貴の体はビクッビクッと揺れ、やがて脱力した。  ひざを床に打ち付ける前に、抱きとめる。  僕の腕を支えに立ち上がった直貴は、泣きそうに笑いながらシャワーをひねって、僕の体を洗い流し始めた。 「……どうしよう。俺、ほんとに朋之さんのこと好きになっちゃった」  教え子の全身に回る猛毒を感じた。  全部、自分が与えてしまったものだ。  そして僕は、そんな彼を、愛しいと感じてしまっている。 「僕はいまね、他の人にこんなことして欲しくないって思ってる。意味分かる?」 「何それ。好きって思われてるのかなとか、浮かれた風に受け取っちゃう」  意味を告げる間もなく、直貴はシャワーを自分の方に向け、ザッと洗い流して、浴室を出た。  割り切ろうとしたであろう少年に申し訳なく思いながら、自分もあとに続く。  服を着て、ドライヤーで髪を乾かしてやりながら――耳の辺りに口付けた。 「え?」 「……ごめん。可愛くて。ほんとに、他の人にしないで」  温風でばらけた髪。  こちらを振り向いて、うれしそうに笑った。 「俺に合わせて嫌々やってるってるわけじゃないんだ」 「違うよ。直貴をずっと守ってあげたくなっちゃったってこと。それで、君を丸ごと欲しい」  こんな、軽蔑すべき人間たちと同じようなことをして。  毅然と拒否してあげた方がよっぽど優しいのだと、知りながら。 「あした、学校で元気な顔見せてね」  そう言いながら直貴の唇を奪い、舌を絡めて、長い間深いキスをする。  僕も自分の毒を浴びて、汚染されてしまったのだと思う。

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