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第9話 生徒会室にて

「くそっ、どおいうことだよ…。」 放課後、学校の掲示板に貼られた新生徒会役員に信任投票の結果を見て怒りに震える俺。 底辺クズ高校なので、生徒会など入りたがるものはいない。夏休み明け早々に生徒会の顧問の先生に会長になってくれと頼み込まれた。悪いようにしないからと言われ引き受け、対抗馬も無く信任投票になったのだが、その結果がすこぶる悪い。 全校生徒の半数以上の信任で当選なのだが、俺の結果は半数を若干上回った程度。 当選なことは当選なのだが、信任投票って何も考えずに『信任する』に丸を付けて出すものじゃないのかな? 誰もなり手がいないのに不信任にあえて票を投じたヤツらは俺の事が嫌いなのか? イラついている俺の後ろから遼太が声を掛けて来た。 「気にすんなって、半分と少しは友也でいいって言ってるんだからさ。」 「ちっ!!俺より遼太が会長になればよかったのに。」 「俺には会長は出来ないよ、頭良くないし。」 「お前の信任結果は100%じゃないかっ!!」 遼太は書記に当選していて信任投票の結果は信任率100%!! 人当たりがいいし、男にも女にもモテるし、かっこいいし当然の結果かもしれないが腹が立つ。 遼太を書記に推薦したのは俺で、会長を引き受ける条件として顧問に要求した。遼太には事後報告だったけど嫌がりもしなかったから別にいいんだろう。 生徒会なんて用は先生の雑用係り、従順に行事をこなすだけで大した仕事ではない。俺一人で出来ない仕事は遼太を使おうと思った。他のメンバーは全然知らないヤツばっかりだし、仲良くなるのも面倒くさい。 遼太が信任率100%になるのも頷ける人懐っこい笑顔で聞いてきた。 「今日は仕事あるの?」 「特にないけど、前生徒会役員が生徒会室を溜まり場にしてたからゴミだらけ、片付ける。」 「結城会長!!お供しますっ!!」 「三田書記、こき使ってやる。」 二階の美術室の隣にある六畳ほどの広さの生徒会室は荒れ果てていた。資料棚には普通に漫画雑誌が詰め込まれてるし、もう絶対使わない看板とか何年も前の余った配布物とかが積み重ねられている。 会長に就任した時、絶対片付けようと思っていた。バカ共の痕跡を消さなくては…。 今日は、俺より頑丈で大きい遼太に重いものを全部運び出してもらって小ざっぱりさせて貰おうじゃないか。 鼻息荒く鍵を開けて、室内に入った瞬間に後ろから抱き着かれて、首と肩に遼太の頭が埋まりスッポリと包まれてしまった。 「俺を書記にしたのは、こういうことか…。」と耳元で囁かれた。 放課後の荒れ果てた生徒会室に二人きり、何か勘違いさせている? 遼太を生徒会に入れたのは小間使いにする為で、二人きりになりたかったワケではない。 結構酷い態度をとってたのに…。 夏休みに一泊旅行に行ってからは気恥ずかしくて、「会いたいな」とか「遊ぼうよ」とかメールとかラインとか電話とかがガンガン来てたけど全部無視していた。 新学期に入っても、顔を見ると赤くなるし挙動不審になっちゃうから本当に気まずくて学校行くの辞めようかと思ったけど遼太は普通に優しかった。照れ隠しで不機嫌な態度しか取れない俺に優しいなんて遼太はМの気でもあるんだろうか。 やっと俺から連絡が出来た返事が「お前を生徒会の書記に推薦した、これは決定だ。」で、「いいけど、どおゆうこと?」と連打されたけど…。俺の小間使いにしようと思っただけで…。 まあ…違和感なく合法的な接点を持つには良い方法かとは思ったけど。 夏休み明け後に久々に見た遼太は日焼けしてて、なんかまた背も伸びてて…。 ああっ、でも学校で抱き着くなっ!!! あちこち触るなっ!! するすると服の中に遼太の手が侵入し、肌を直に触れられて、巻き付く腕を振りほどいた。 キョトンとする遼太に吠えた。 「いきなりサカるなぁぁぁあっ!!片付けにきたんだぁぁっ!!」 「サカるって何?」 「ムラムラするって事!!」 「そういうことか、俺は今すごいムラムラしているっ!!」 なんか聞き覚えのある会話、その時この後にした事を思い出したら当然のように赤くなるし、俺の好きな遼太の人懐っこい笑顔を久しぶりに間近で見て狼狽えた。 「なんかもうイロイロしてるのに、かわいいな友也は。」とか言って懐いた犬みたいに擦り寄って来て、気づくと床に座られせられていて遼太の口か俺の口にガッツリハマっていて流されそうになったけど、「見つかると嫌。」と言うと「見つからなければ、いいっていうこと?」と聞いてきた。 「まあ、そうかな」と答えると、すくっと立ち上がって、カーテン閉めて、ドアの内鍵を閉めて、さらにその前に捨てようと思ってた使わない看板を何枚か置いて戻ってきた。 また、ガンガンと手際よく外堀を埋められていく、「ちょっと待って、ここでするなんて…」と言ったら今度はスクールバッグの中をゴソゴソしだして先日使った通販で買ったというモノを見せられる。 学校に何持って来てるんだコイツはっ!! なんでこんなに準備いいんだ、チャンス狙ってた? 恥ずかしさと怒りでプルプル震える俺に垂れ気味の目を余裕気に細めて聞いてきた。 「後は何をクリアしたらいいの?」 「…声っ…声でゃちゃうから、しない。」 「それなっ、気づいてたんだ。真面目なのに友也はドえろい声出すタイプだよなっ。」 「言うなっバカ!!絶対しないっ!!」 「でもかわいいよマジで、声が出そうになったら塞いであげるから、しよ?」 「塞ぐって!!手でっ?」 「それもエロくていいな…でもうるさい口を塞ぐって言ったら…。」 日焼けした遼太の手が俺の両の頬に伸びてきて、俺の好きな顔が近づいてくる。 「口は口で塞ぐ」とか言うから「ドえろいのは、お前じゃあ!!」と叫ぶ前に遼太の口で塞がれた。 なんか外堀も埋められまくって抵抗する気も失せてきた俺、脱力気味になった。 にこにこと人懐っこい笑顔を向け「これで大丈夫?」と聞かれ無視していたら、タオルを渡された。 キョトンとする俺に人のよさそうな顔を向けて「手が離せない時はタオルでも噛んでてよ」と言われ「最初から渡せぇぇ!!」と叫ぶ口を口で塞がれた。 見つかったら、只じゃ済まないのに学校でするなんて、どうかしている。 まあ、本気で逃げようともしなかった俺も俺だけどと思った。

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