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第12話 拘束

休日、遼太から画像添付のラインが来た。 ネット通販の商品が届いたよう、絶対壊れなさそうな太い黒色のレザー風の首輪が映っていた。 勝手ながら首輪が欲しいというマイブームはおさまっていて、こんなSМ趣味丸出しのプレゼントを貰っても、部屋のどこに隠したらいいのか分からないし、外には付けて出られない。 今更、要らなくなったとは言えないし、かと言ってウチにも置けない。 遼太の家は農家だから納屋とか隠す場所がたくさんありそうなので、そちらで保管して欲しいと返事した。 「実物を見に来ないのか」とメッセージが入り、自分から欲しいと言った手前「もう、いらねぇし、置くとこもねぇし」とか言えないから、久々に川を越えて遼太の家に行った。 季節は実りの季節というか、収穫を待つ金色の稲穂たなびく農道を自転車で疾走すること30分あまり、ようやくたどり着いた。 遠い…、自転車ではキツイ…。 田舎は車社会なのがよく分かる。欲しい物がある所は物理的距離があり過ぎて徒歩とか自転車では容易にたどり着けない。 自動車が足の代わり、ここで暮らすには一人一台自動車が必須…。 肩で息をしながら玄関の引き戸を開けて「ごめんくださーい、遼太さん居りますか」というと「はーい」という明るい声と共に遼太のお母さんと見られる女性が出てきた。 穏やかで優しそうな人、ニコニコと俺を見て「遼太のお友達?今ね、ちょっと買い物に行ってるから待ってて頂戴」とのこと。 俺をどこの誰かとも聞くことなく家に上げてリビングに招き入れてお茶を出された。どう振舞ったらいいのか分からない俺の横に座り、「遼太の学校の友達?」と聞いてくる「はい、高校の同級生です。遼太さんには仲良くしてもらっています。」と答えると「もしかして、友也君?夏休みに一緒に旅行に行った?」「はい、そうです楽しかったです。」と俺を退屈させないように会話を振ってくる。 遼太が俺の事をどう話しているか分からないけど、非常に好意的で嬉しいのだけど、すごく複雑な気分。 仲良く…旅行…ああ、この純真な目をしたご婦人には想像もつかない事をしている。いたたまれない。 ガラガラガラ‥‥ 玄関の引き戸が開く音が聞こえ、俺の靴を見つけたのか「友也、来てる?」の声と共にレジ袋を持った遼太が入ってきた。 遼太の母親に「友也君を結構待たせてるわよ」と言われ「ごめんごめん、飲み物とか買いに行ってたからさ」と明るく答える遼太。 ホント普通…、全然、普通…。 明るく紹介出来る間柄か俺達は…。 なんかコイツ俺の彼女とか言い出したりしそう…。 彼女はないか、彼氏? 遼太のあっけらかんとした態度に戸惑っていると「友也、俺の部屋行こうよ。」と言われて、遼太を待っている間退屈させないように気遣ってくれた遼太のお母さんに会釈をしてついて行った。 二階の部屋につくなり「見て見て見て!!」と若干興奮気味に黒色の首輪を見せられた。 クッションに座って炭酸飲料を御馳走になっていた俺は吹き出しそうになった。 艶々黒々とした想像以上に厚みがある材質。 しっかりして絶対に壊れそうにない作り。 機能性もあるのか鎖も繋げられるように中心部にはシルバーの大きいリングもついている。 「へぇ…」と見てると、ゴソゴソと「これもセットだった」と同色の皮ベルトの手錠とシルバーの長い鎖も出してきた。 …ちょっと待て、なんかガチなSМ小道具じゃないかっ!! 引きまくっている俺を気にもせず、シャツのボタンをプチプチ外すと先日のチョーカーが目に入ったよう。 「ちゃんと付けてるんだ。学校には付けて来ないのにさ。」 「Yシャツだと透けて見えるから…。」 (ポケットには入れてある) 「別に見えてもいいじゃん、イメージ変わるよ。」 軽く言うけど、生徒会長が女物のチョーカーつけて学校を闊歩したらヤベぇヤツにジョブチェンジしちゃうだろうが…。 「もう髪も結構伸びてるし、友也は可愛い系で通るって!!」 可愛い系…自分が向かっている方向性が分からない。 気づけばショートボブという髪型のようにもなっているし、ウチの母親には女みたいな髪型するなって怒られている。 自分のこれからの方向性を考えていたら「せっかくだから付けようよ」と言われSМ小道具を装着された。 皮ベルトの手錠は要らないのに…と思っていたら、首輪にあるリングに長いシルバーフックが掛けられて手錠と繋がれしまった。 ニコニコと「いいね」とか言って来るけど、何がいいのか。 シルバーフックに繋がれた両手が胸の辺りから動かせない。 どういう用途に使う道具なのだろうかと考えていたら「可愛いから写真でも撮ろうか」とか言い出し、スマホを向けて来るからキレそうになった。 シルバーフックをガチャつかせながら遼太に小声で叫んだ。 「バカ!!こんな格好撮るなよなっ!!外せ!!」 「…あれ?嫌なんだ、欲しかったんじゃないのか?」 「欲しかったのは首輪だけだっ!!」 「首輪が欲しいっていうのも十分変だけどな…でも…。」 「でも?」 「今日は元気そうだね、最近おとなしいし様子が変だったから心配してた。」 俺を見る遼太の垂れ気味の目がマジで心配している風情。 おとなしい?様子が変? なんとか優しくしようと俺なりに頑張っていただけなのだが…。 カラ回りしてたのか?ああ、腹が立つ!! イラついて口で手錠のベルトを外そうと噛んでいたら、うっとりとした様子で遼太の顔が近づいてきていた。 なんだろう?何?その目は?遼太は暴れ気味の俺が好きなのか? ってか、階下にお母さん居るのにっ!! あんな純真で優しいお母さんがいる所で何しようとしてるんだ!! 近づく顔をグイグイ押さえていると玄関の引き戸が開く音と「買い物行って来るわね」と呼びかける声。 同級生をSМ小道具で拘束し襲おうとしているのに「はーい、気を付けてね」と普通の返事を返す遼太。 どうして普通に返事できる?全然焦ってない!! 肝が据わっているって、こういうヤツのことか? 拘束されてフローリングに転がされている俺に人懐っこい笑顔を向け一言。 「俺の親って、空気読めてるよね。」 あれ?俺、罠にハマってない? …親が買い物に出かける時間帯見計らってない? しかし両手を拘束されて転がされると抵抗という抵抗が難しい…。 こういう用途に使うのか…と考えている内に結構脱がされかかっていて叫んだ。 「お前んち、まだ家族いるだろうがぁ!!帰ってきたらどうすんだよ!!」 「そん時はそん時でなんとかなるって、友也は元気な方が絶対いいって。」と納得できないまま普通に襲われた。 俺には出来ない肝のすわり方を目の当たりにして抵抗する気が失せた。 優しくするって、なんだろうな、遼太は、そのままで良いと言っている? しかし両手が使えないと好き放題され過ぎる、全然日も高くて明るいし、窓も空いてるし、顔を隠そうにも手錠で手は上がらないし…遼太の顔はよく見えるけど…。 手錠を外してとお願いしたが「可愛いからダメ」と甘く言われ遼太の趣味に疑問を持った。

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