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第29話 黒ずきんちゃん

「無理、無理、無理っっ!!」 騒げば騒ぐほど、抵抗すればするほど、逆に彼を煽っていることに気が付いた。 こうなったら方針転換をするしかない。 新学期早々、朝早くから生徒会室の床の上でモメまくっている男二人。 俺を組み伏せているのは、朝から学校でヤろうとする肉食男子。 男子の草食化が危惧されている昨今、強引にコトを進めて来る肉食男子は貴重かもしれない。 やはりモテるヤツは肉食だよな、普通の人は違うよな、すごいよ遼太は。 じゃあないからっ! 遼太の家でエロい事は散々したから、別にエロい事はしてもいい。 ただ、時と場所がダメだ! 始業前の校内なんて、誰かに知られる可能性が高いだろ? 好きだけどバカだと思う遼太は。 「無理、無理、無理っっ!!」の連呼に「大丈夫、大丈夫、大丈夫っ!」を被せてくる。 結構な勢いで抵抗してるのに脱がされかかってるし、どうみても強引に押せば最後は諦めるんだろうみたいな顔してるし、腕力体格も敵わない。 騒げば騒ぐほど、抵抗すればするほど、逆に彼を煽っている。 ああ、俺、すごい大声出してたけど、今は何時? 遼太の肩越しに見える時計の時刻は7時42分、まだ登校時刻ではない。 抵抗するのも疲れたし、クリーニングに出したての制服もシワになる、遼太も俺が諦めるの待っている。 こうなったら方針転換をするしかない。 これ以上の抵抗は無駄、今日は始業式だから全体朝礼もあるし遅れるワケにもいかない、さっさとヤらせて終わらせないといけない。 近づく顔をグイグイ押し戻しながら言った。 「分かった、ヤるから、自分で脱ぐから、ちょっとどけ。」 体育でもないのに学校で服を脱ぐのはどうなんだ?ゴソゴソ脱いで「さあ、どうぞ」と寝転がったら遼太が不思議そうな顔をする。 え?何その顔? 自分で脱がせたかった? ヤる気が失せたんなら、それはそれで大歓迎。 ヤらないんなら着替え直すかと身を起こそうしたら、遼太が両手で顔を抑えてプルプルしている。 「やばい…学校帰りのX学生を襲う感じなんだけど…。」 制服がシワにならないように脱いだけど、寒いから黒色のダッフルコートは着た。ついでにベリーショートを隠したいからフードを被って、声漏れ防止のためにネックウォーマーを鼻先まで上げている。 「黒ずきんちゃんぽい…。」とか囁いて来るけど、それって何のキャラ?赤ずきんの色違い? なんかどうでもいいから、さっさとヤろうよ、どうせ遼太はすぐイかないんだから。 焦っている俺とは反対にのんびりし過ぎでイラ立つ。 「可愛い」と言ってテンションが上がってる遼太のネクタイをグイっと引っ張って、唇を押し付けたら「どうした!」と驚いて来るけど「早くヤれ!」だ、マイペース過ぎるぞ。 やっとヤる気になってキスとかしてきたけど、時刻は8時になろうとしている。 嫌な予感しかしないけど身を任せた。

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