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第5話 祭壇 ♥

「ミカエル様…お情けを」 ひとしきり鞭を振るった後、伯爵が俺の脚にすり寄って来た。 気色悪いので後ずさる素振りをみせた瞬間、左右の少女達に止められた。 純白のドレスに額を擦り付けられる。 また同じ台詞を言う。 「ミカエル様…お情けを」 意味が分からないで戸惑う俺に緑の瞳の少女が囁く。 「性交したいって意味よ。」 鳥肌が立った。おぞましくて、後ろに足が動く。 少女に肩を押さえられ、耳元で囁かれた。 「大丈夫。すぐ終わるわ。少しがまんしなさい。」 怒りがわくのと伯爵の悪趣味に背筋寒くなる。 何を考えているんだ礼拝堂の祭壇でなんて。 しかも白いドレスの少女はこの二人だけじゃない。他にもいる。 付き合いきれないし、付き合いたくない。 『いや』と叫ぼうとしたら少女の手で口を塞がれた。 有無を言わせぬ口調で短く告げられる。 「いいから座って。」 膝をついた俺に抱き着いてきた。 「ミカエル様この日を待ち望んでおりました。」 芝居がかった動きと言葉。気色悪くて撥ね退けたくなった。 俺を見ているようで見ていない濁った陶酔した目。 少女達の手で祭壇の床に静かに倒された。 仕事とは分かっているが嫌悪感が止まらない。 固く目を瞑ってやり過ごすしかない。 「あなた様の美しい瞳がみたいのです。お目を開けていただけますか。」 伯爵の声から少し遅れて少女の声が耳に入った。 「目を開けて。」 仕方なしに目を開ける。 目に入るのはステンドグラスから差し込む美しい光と俺にのしかかる醜い男。 神聖な空間でこの醜い男は何をしようとしているのか。 大天使の名を付けた少年を犯すことによって神に逆らっているつもりなのか。 そして俺は退廃的な余興を楽しむ道具。 どうしようもない嫌悪感から撥ね退けようと腕を上げたら少女二人に押さえつけられた。 怒りと屈辱で涙が止まらない。 少女が耳元で囁く。 「大丈夫。すぐ終わるから、ここから見える綺麗なものでも見てなさい。」 優しく言われてやっと自分を殺すことが出来た。 「レリエル。」 礼拝堂を出ようする伯爵が名前を呼んだ。 俺を押さえていた緑の瞳少女が急いで駆け寄る。 パァァァァン! 少女の頬を打ち据えた音が響き渡った。 伯爵が頬を押さえる少女に厳しく言う。 「今度は泣かせるな。興が冷める。」 「申し訳ありません。伯爵様のご期待に添えるよう教育いたします。」 謝る少女の肩が震えている。 謝る必要なんてないのに。 礼拝堂の扉が閉められる。 生きることの意味が分からない。 こうまでして生きてる意味はあるのだろうか。

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