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第6話 仲間
「はい!撤収!帰ろうみんな!」
伯爵が礼拝堂を出て行って足音が遠くなってから暫くして緑の瞳の少女が大きな声を出した。
壁際にいた白い服の少女たちが集まってくる。
「ホント、最悪。早く死ねばいいね、アイツ。」
「まったく、今日はもうこれで終わりかな?早く忘れて楽しく過ごそうよ。」
「レリエル、大丈夫?思いっきり叩くなよな。豚が。」
「赤くなってるよ。後で冷やそう。」
「う~寒いよ。ここ。でも結構早く終わって良かったね。」
「温かいお茶飲みたいね。早く帰ろう。」
「う~~、今日も見たくないもの見せられた。最悪。」
少女達が自由に話し出した。
意外な光景に驚く俺。
そばにいる琥珀色の瞳の少女が涙を拭ってくれた。
「ほら、もう泣くなよ。ミカエルだっけ?」
年も変わらない感じなのに頭を撫でられた。
「泣いちゃうよね。なんか、可愛がられてたぽいしな。あの髭のオジサンにさ。」
俺のこともドーマー男爵のことを知っている。
この少女もあのパーティに居たことが分かった。
憐憫を含む笑顔で諦めとも慰めとも言える言葉を伝えられた。
「まあ、ここに来ちゃったんだからしょうがないよ。俺達と伯爵の従順な玩具になって大人になるまでやり過ごそうよ。」
従順な玩具…大人…?
それはいったい…いつまで?
「カシエル、帰るわよ。ミカエルを連れてきて。」
さきほど、頬を打たれた少女が礼拝堂の扉の前で俺達を呼ぶ。
「立てる?ここは、寒いから戻ろう。もう仕事は終わり、忘れよう。」
立ち上がった少女が俺に手を差し出す。
笑顔で手を差し伸べられても、押さえつけられた不信感から手を取れない。
「怖いの?俺のことが?でも、もう覚悟を決めて。君は俺達の仲間になるしかないんだから。」
覚悟…?仲間…?
「カシエル行くわよ!」
少女の怒った声に促されて、カシエルが慌てて俺の手を掴む。
何事もなかったかのように琥珀色の瞳の少女が明るく微笑む。
「レリエルは怖いおねえさんだから、早く行こう!」
カシエルに手を引かれ扉に向かう。
ドア前にいるたくさんの少女達の視線が俺に注がれた。
先ほどの恥辱が蘇えりうつむく俺に手が差し伸べられた。
意志の強さを感じられる緑の瞳の少女が強く大きな声で言う。
「ミカエル、よろしくね。あなたは私達の仲間よ。一緒に頑張りましょう。」
初めて聞く仲間という言葉に戸惑いながらも少し安心した。
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