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第15話 嗚咽

「ほら、もう落ち着いて」 伯爵への怒りと憎しみで震えているレリエル。 しばらくしてカシエルの憐憫を含んだ優しい微笑みを見て、なんとか自分に折り合いをつけた。 ここは自分が望もうが望まないとかは関係のない世界。 主人の命令には従わなくてはいけない。 たとえそれが自分の意志に反していても、決して抗ってはならない。 不機嫌のあまり歯ぎしりの音が彼女から出た。 意志の強さが表れている緑の瞳がカシエルを睨みつける。 忌々し気に命令した。 「脱ぎなさい。さっさと終わらせるわよ。」 彼女のきつい態度など全く気にせず柔和に微笑むカシエル。小さくコクンと頷いた。 座って向き合う二人、後ろ手で背中のチャックが下され白いドレスが大きな花のように床に広がった。 ドレスの上に膝立ちする二人。背の高いレリエルが眉根を寄せてカシエルを見下ろす。 ブラウンの巻き髪から見える横顔が彼女を静かに見つめている。 彼の手がレリエルの顔に触れようと伸びる、触れそうになった瞬間、彼女に手首を掴まれた。 短く早く告げられる。 「私がするから、あなたは何もしないで。」 完璧に苛ついてる態度を見てもカシエルは柔和さを崩さない。 ただ優しく彼女を見つめる。 その姿にますます苛立つ彼女。 「目、閉じて。」 彼が少し残念そうに瞳を閉じた。 レリエルが諦めの溜息を漏らし、乱暴にに口づけし彼を組み伏せた。 白いドレスに埋まりながら義務的な接吻を受けるカシエル。 望まない性交でも少しは雰囲気を和らげようと彼女に腕を伸ばす。 彼女の顎で切り揃えられた黒髪を触ろうとしたら所ではね避けられた。 小声でこそこそ言い合いを始めた。 「いいから、そういうのは。」 「もう少しやさしくしてよ。」 「仕事でしょ。なんでよ。」 冷徹に言われてカシエルが口ごもる。 「なんでって…、…、…。」 めずらしく素で赤くなる彼を見ても彼女は全く意に介さない。 彼の体の上に跨り、さきほどからずっと起立している陰茎を自身の秘所にあてがった。 「もう、挿れるわよ。」 「ちょっとまって、レリエルは濡れてるの。大丈夫?」 早く終わらせようとする彼女の気持ちは分かるが強引すぎる。 先端しか入っていないのにカシエルから悲鳴が上がる。 「痛っ、痛いって、もう、レリエル無理しないで。」 年下の彼に気を使われる恥ずかしさと痛みでキレそうになっている。 怒りで理性が飛びそうになっている彼女を見てカシエルが慌てて起き上がった。 伯爵が二人の険悪な雰囲気に何事かと声を掛けた。 彼女の顔が見えないように抱きかかえたカシエルが笑顔で首を振る。 怒りと悔しさが止まらない彼女。声にならない嗚咽で震えている。 腕の中で激しく怒っている彼女をブラウンの長い巻き髪で隠し優しくなだめた。 「ほら、もう落ち着いて」 無理して気丈なふりをしていただけの彼女の目から涙が零れ落ちる。 普段は絶対みせないしおらしい姿に嬉しそうに目を丸くするカシエル。 彼の琥珀色の瞳がいつものいたずら好きな輝きを見せるが、すぐに納めて彼女を白いドレスの中に優しく埋めた。 組み伏せられても抗う意志を見せない彼女。 涙に濡れる頬に口づけする。 甘く優しく囁く。 「君がやるより俺がやった方が早く終わるから。ね、レリエル。」 実際の所、全然早くもなく途中から正気に戻ったレリエルに怒られていた。 それが彼の計算なのかは分からない。 怒られながらも若干うれしそうだったので多分計算の範疇だと思う。 女の子は14才になったら伯爵の愛妾を解雇されて、屋敷勤めの使用人として働くことになる。 男の子は声変わりが始まったら解雇になるそう。

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