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第33話 [交錯]③ ベニトアイト・ラティエル ♥
「俺はアンタには興奮したくないんだっ!!」
すごい最悪な目に合ってしまった。
カシエルとサンダルフォンは絶対に許さない!!
俺はのここでの名前はベニトアイト・ラティエル。
サファイアよりは青が薄い宝石ベニトアイトと星座の天使とかいうラティエルの組み合わせ。
王都の大貴族シュミット伯爵の愛妾の一人として働いている。
愛妾って何をするかっていうと要するにエロ要員。
主人がヤりたい時に好きなだけヤらせる仕事。
俺は男なので男娼という括りになるけど、別に体売って生きていたワケじゃない。
親も兄弟もいるし、性癖も至って普通。エロをするなら女の子がいい。
仕事とは言え、無理矢理連れて来られた今日の夜伽。
選ばれなくてもいいのに選ばれた。
「嫌です!」「最悪です!」「死ねよオッサン!!」とか叫びたいけど、叫ぶと殺されちゃうので叫べない。
ヒクヒクと引きつる愛想笑いの向こうに居るのは、豪華な天蓋付きのベットの上で、にこにこと俺を手招きするのは禿げ頭のでっぷりと太ったオッサン。
俺はというと真っ白なドレスに身を包み嫌過ぎて体が震えている。
自分は普通な男なのに少女の女装して小汚いオッサンに抱かれないといけないこの不思議。
嫌過ぎて近寄る速度が遅くなる。
「恥ずかしがらなくても良い。」とか言ってきてベットに引き込まれた。
オッサンの舌が俺の耳とか首筋を這い回る。気持ち悪くて歯ぎしりしそうになった所で太い指が口に差し込まれこじ開けられた。
男の太い指を舐めさせられて、だらしなく開いた口に入れ替わりに入って来たのは男の舌。
何を興奮しているのか息が出来ないほど乱暴。
目の前の男から意識を外さなくては、やってられない。
後悔のあまり何度も考えることがある。
何がどうしてこうなったのか…。
まずは、容姿…母親似の容姿が良くない。
俺の母親は綺麗な人だった。あっ、死んではいない、ちゃんと生きている、めっちゃ元気に生きている。
直毛のサラサラした髪質の長いプラチナブロンド、瞳は水色に近い青。
切れ長の目が若干アンニュイで色気がある。
…ってか、まんま俺なんだよ、母親の複製品が俺。
男の俺に美人遺伝子なんかいらねーっつうの!!
次ぎ…俺が居た所が良くない。
王都の片隅で青果店を営んでいた俺の家族。
当然の様に一緒に働く俺、別に女装してたワケじゃない。
髪だって、今よりは全然短かったし、女顔だけどハツラツとした少年として生きていた。
忘れもしないあの日、店先に林檎を並べる俺の後ろから声がした。
「可愛らしい…、実に可愛らしい…。」
容姿を褒められるの良くあること。
うれしいけど稼ぎにならない。
商品を買って貰わないと、稼ぎにならない。
愛想笑い一つで、1個買う予定の客が10個買ってくれる事もある。
たくさん買ってもらおう!!
いっぱい売れれば、儲かる!!
晩御飯も良くなる!!
商売魂に燃えた俺、母親譲りの美貌をMax活かして極上の愛想笑いを向けた。
赤い林檎を手に従者を従えた金持ちそうな太ったオッサンへ歩みよった。
ぶっといオッサンの手に林檎を載せて、買わずにいられなくなる言葉を言った。
「どうぞ、いかがでしょうか旦那様、とても美味しいですよ。」
…今思うと、何言ってるんだ俺のバカ。
変態を勘違いさせてるじゃねぇかっ!!
美味しいの俺じゃねぇ…林檎なんだよぉぉぉ!!!
…その晩、親から昼間の太った金持ちオッサンが王都の有力貴族で自分を愛妾として迎い入れたいとの申し入れがあったことを聞かされる。
何するのかは分からないけど、小奇麗な格好して金持ちオッサンの相手をすれば将来が安泰らしい。
貴族というのに興味があったので行くことにしたバカな俺。
誰が悪い?何が間違っていた?俺が悪い?
後悔…後悔…。
息苦しいのと気持ち悪いので息が上がる俺。
汗が止まらない、「脱ぐか」と言われてドレスを半分ほど脱がされて意識が戻った。
全裸は嫌!女の子として抱かれた方がまだ全然いい。
脱がされそうになる服を押さえて首を横に振ったら、「いつも可愛いな」と頬を撫でられた。
ここ半年以上は相手をしてないから多分、ミカエルと間違っている。
ミカエルも嫌がるタイプだからなぁ…、アイツ本気で泣くし。
俺は嫌だけど泣きは…と思っていた所で「良いものがある」と小瓶に入った液体を飲まされて下半身に何かを塗られた。
最悪すぎて歯ぎしりしたい、俺は嫌だって言ったのにここに来るの…、ここに来ることになった原因の二人が憎い。
元凶の二人を睨もうと思い、ベットの外に目を向けたら二人は何故か抱き合ってた。
選ばれてしまってパニくってたけど、二人で遊べとか言われてたな。
カシエルの顔が引きつっている…ざまぁカンカンだぜ!!
いやいや、そんなことよりこのオッサン俺をどうしようとしてるんだ?
ヤるんなら、さっさと突っ込めってんだよ、俺は男相手じゃ勃たないっていうの!
いつまでぐちゃぐちゃ触ってんだろう、いい加減気持ち悪いぞ。
執拗に陰茎を擦りあげて来る手を掴んで怒らせないように控え目に言った。
「あの…伯爵様…私は大丈夫なので、どうぞ、もう挿れて下さい…。」
伯爵が怪訝そうな顔をしたので怒らせたかと焦る俺に「おかしいな…もっと使うか」と空恐ろしい事を言って丸い缶の裏を眺めた。
後ろを向くように指示されて伯爵にケツを向ける格好なった俺。もう嫌な予感しかしない。
見えないから分からないけど大量にネトネトした塗り薬のようなものか付けられた。
恥ずかしい格好をさせられている俺、伯爵の顔を見なくてもいいのが救いだけど、ふかふか枕を抱いて気の済むまで触らせないといけない。
こんなに、しつこかったっけ?
だから、あの二人サクサク動いてたのか?
終わったら絶対文句言ってやるとカシエルとサンダルフォンの方を見ると、めっちゃモメている。
どっちが悪いんだっけ…んっ…
ホント…絶対許さない…あっ…
…あれ?…、なんか俺の口から変な声出てないか…んぅっ…
多量に塗られた何か、尻穴に入り込むオッサンの太い指…
ヌメヌメと尻穴を広げられ腸壁を擦られる感覚にビクつく体、女の子みたいな声は止まらないし、何したんだよオッサン!!
俺はアンタには興奮したくないんだっ!!
増やされた指が滑り、いつの間にか張りつめている陰茎を扱かれる。
…ホント…もう…あっ…あ…
ガタつく体に戸惑いながらいつもは絶対言わない言葉が出た。
「…い…いっ……いやぁぁ…!!ちょ…イクって…あ…!!」
悔しくて音がでるほど奥歯を嚙みしめた。
…最悪…最悪…こんなオッサンに射精させられるなんて…。
泣きそう…気持ちいいけど…いや…。
さっき飲まされた何かも効いて来たよう、体も頭も熱い…。
脱力している俺の汗にまみれた背中を触り「脱ぐか」と聞いてきた。
もう抗う気力もない…どうにでもしてくれ。
脱がされて向かい合うのは、俺の射精を見て満足気な男の顔。
不思議と腹がたたない…、触れたいか…触れられたい…。
男の手を取り胸に当てて、残った手の指を舐める…。
ひとしきり舐めた後で目に入ったのは男の唇。
熱に浮かされているような意識の中、残っていた理性らしきモノの呟き。
…もう…何か本当にいかれているな俺…
醜くて嫌いなオッサンの腔内に自分から舌を差し込んだのを最後に明瞭な記憶がない。
ヒクつく体、色んな所が開いている気がする。
思考が戻り始めた俺に届いた声。
「よかったぞ…ラティエル。」
さっきのは俺じゃないから勘違いするなと言いたかったけど、体が動かなかった。
本当、最悪…。
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