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第36話 【木陰】① ロザリオ×サンダルフォン ♥
シュミット伯爵の近衛兵として働く、ロザリオ・ブールドは最近本気で悩んでいた。
最近二十になったばかりの彼、若干童顔だが体格が良く背が高い、黒いクセっ毛は短く整えられている。
彼の近頃の仕事は本邸と西の端の別邸の警備、非常に暇で退屈な仕事。今は平安な世の中、野盗が襲ってくることも無い。
危険な可能性があるとすれば主人を暗殺しようとする輩か屋敷内に入り込むことくらい。入って来た事は未だないが、その時は命を懸けて戦わなければならない。
王都の有力大貴族なので政敵も多く、いつ有事があってもおかしくはない。でも、今は至極平穏、野良猫が入り込むくらい。
二人体制で警備をしているが、無意味な時間を過ごしていると頭の奥にいるもう一人の彼が囁く。
仕事ながら暇すぎて辛くなっていたある日の事、西の端の別邸にいる愛妾達の一人と関係を持つようになった。
12、13歳位のもふもふした長い赤毛の少女に襲われた彼。襲われたと同時に恋にも落ちた。
少女の要求は屋敷内の情報で請われるまま偵察し報告してしまう。
真面目な彼だが、気づくと主人の愛妾に手を出した他に屋敷内情報を漏らしていた。
命に関わる事なので、もちろん誰にも言っていない。
昼下がりの警備中、二人組で所定の位置につくロザリオ。まだ肌寒い季節だが、じっと立っていると日差しが暑い。
ゴッ…!!
背中に結構大きめの石が投げつけられた。
激痛で振り向くと離れた木の陰からもふもふした赤毛が見えた。初めは、投げつけて来たのは小石だったのに、回を重ねる事に大きな石になっている。
制服と厚手の外套を羽織っているが当然痛いから背中をさすった、少女から「早く来い」という瞳が向けられている。
暇だとはいえ、そんなに簡単に仕事は放棄出来ない彼、普通に困る。
3個目の大きい石が当たった時点で、警備の相方に腹痛がすると嘘を言って仕事を離れた。
少女が居た木陰へ向かうとすぐに手を掴まれて、林の奥深くへ足早に向かうことになった。
警備していた場所から、ずっと奥の林の中、もう誰の目に触れられない場所。
ロザリオの腹にもふもふした赤毛が埋まり、顔を擦り付けられた。
すごく懐かれている様子に見えたロザリオ「そんなに俺に会いたかった?」と思い若干嬉しくなる。
関係を持ってはいるけど、この赤毛の少女の事は何も知らないロザリオ。唯一、知っているのは雇用主である伯爵の愛妾の一人と言う事だけ。
背が高いロザリオ、腹の辺りまでしかない背の少女に視線を落とすと少女の顔が上がった。
少女のシルバーの瞳が怒っている。怒りついでに不満を伝えられた。
「遅いよ、ロザリオ。僕もそんなに抜けられないんだから、呼んだらすぐ来てよね。」
「…ごめん。」
(俺も仕事中なんだけどね)
「次は、呼んだら一回で来てよね。来なかったら、すごい大きい石投げるからね。」
「…うん…。」
(今日投げられた石も大きかったけど?)
「ふふ、いい子だねロザリオ。顔に届かないんだけど、どうすればいいか分かる?」
「…うん…。」
身体的な有利さはロザリオが圧倒しているが小生意気なことを言う小柄な少女に逆らえない、従順に腰をかがめて頭を近づけると乱暴に顔を掴まれ舌が腔内に差し込まれた。
少女に口づけされたのは何度目なのかは数えていないが、毎度毎度、赤面になってしまうロザリオ。
その様をシルバーの瞳が捕らえ残忍で満足気な微笑みが彼に向けられる。
離れた唇から覗く赤い舌付近から声が発せられる。
「まだ、慣れないんだロザリオ、可愛いね。」
彼が、からかいと嘲りを含んだ声音に感じるのは、羞恥と苛立ち…それを覆い隠すほどの少女に対する強烈な愛しさ。
壊してしまいそうな、その細い肢体を強く抱きしめると少女の腰に回された手が背中をポンポン叩き軽く言われた
「ロザリオ、僕の事が好きなんだね、分かったから早くやろうよ。」
一見清純そうに見える年下の少女は会うたびに毎度毎度、事も無げに性交しようとロザリオに言う。
ロザリオも嫌ではないけど、ロザリオという名前だけに敬虔なカトリック信者の家で育っている彼は真面目に正しく生きてきた。
昼日中、野外での情交、しかも勤務中、雇用主の愛妾を寝取っている…、これだけで幾つの禁忌を破っているのかと考える。
その破り過ぎた禁忌を上回る悩みがロザリオにはあった。
すごく手際よく下半身を暴かれて陰茎に少女の赤い舌が添えられた。
彼の黒い瞳に映るのは酷く淫らな光景。赤毛の少女が奉仕する姿に興奮せずにはいられない。
何を悩んでいたのか忘れそうになる彼の思考が戻る。
…可愛い…一生懸命で可愛い…。
でも…いつも服着てやってるから全然繋がってるとこ見えないけど…、見えなくて分からないけど…、そもそも俺は童貞だったし女の子がどうなっているかも分からないんだけど…。
胸が全然膨らんでいない少女にしか見えない、この子。
…男…男の子なんだよね?
伯爵の愛妾達は、少女姿の少年らしい、俺は男同士で性交している?
真面目ながらも何故か禁忌を破りまくる状態におかれているロザリオ・ブールドは最近本気で悩んでいた。
その悩みは可愛らしい少女の姿をした赤毛の少年をどうしたら良いのかだった。
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