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第49話 [ラティエルの受難]② 誓い

夜になって本邸の伯爵の寝室に行く時間になった。 身支度を整えて、いつもよりちょっとキレイな俺達が出来上がる。 先頭を歩かざるを得ない俺は足が重くてしょうがない。ザフキエルは呑気に口笛吹いてるし、サリエルはおどおどふるふるしている。 ザフキエルは絶対ないとして、サリエルを選んでくれないかな、俺じゃなくって。 覚悟を決めて伯爵の寝室に入り、メンバーのトップなのでスカートをつまみ頭を下げて決まりの口上を言う。 「伯爵様、ご機嫌麗しゅう存じ上げます。今宵は私達が伯爵様をおもてなし致します。」 言い終わり顔を上げると、天蓋付きの豪奢なベッドに座っている伯爵がイマイチ微妙な顔をして俺達を見ている。 …まあ、お気に入りの2匹がいないからな。 カシエルとサンダルフォンよ、風邪なんて引くなよなっ早く元気になってくれぇぇぇ!! サリエルはプルプルしてるし、ザフキエルは…って、おい!!腕組みすんなぁ!! ああ、どうしよう…、俺が行くしかないのかな。 仕方ないと足を一歩踏み出そうとしたら、俺の横を一本にまとめた黒髪が通り過ぎた。 ザフキエルがツカツカと伯爵の元に向かっている、ベットに腰掛ける伯爵の前に立ち、腰に手を置き仁王立ちしてハッキリした口調で言う。 「伯爵様、今日は俺が相手をするぜ!!」 ああ、なんて男らしくて堂々とした誘い方。 …いやいやいや、俺とか言うな、私だろ?百歩譲って可愛く僕だよな!! 白いドレスから覗く健康的な褐色の肌、後頭部で一つにまとめて垂らした黒髪が揺れている。 ザフキエルに正々堂々とガッチリと肩を掴まれた伯爵が男らし過ぎる誘い文句に動揺して目が泳いている。 「ざ…ザフキエル、相変わらず元気そうだな。」 「俺は、いつでも元気だぜ!!さあ、やろうぜ伯爵様。」 「…あああ…、うーん、今日は…、ちょっと考えさせてくれないか。」 そう言って、助けを求めるように俺とサリエルをチラチラ見て来る。 いやいやいや…、なんかやる気満々なんだからザフキエルを選べよ。 ムードとかなさそうだけど、スポーツチックなエロが出来そうじゃん。 長く波打つアッシュブロンドをふるふるさせているサリエルは、怖いのか全然頭を上げないし、やっぱ俺が行くしかねぇかと腹を決めたら、サリエルが意を決したように飛び出して行った。 意外に根性あるじゃん!!サリエルっ!! 伯爵の膝に飛びつき、細く可憐な肢体を振るわせて紫色の瞳から涙を零しながら切々と訴えた。 「伯爵様…、僕は大きくなったらこのお屋敷で働きたいのです、でも全然お相手に呼ばれなくって、序列も悪くって…、僕、売られたり、交換されたりしないですよねっ…、売らないで下さぁぁぁいぃぃぃ、うええええぇぇぇっ!!」 …えっ?サリエル?号泣してね。 伯爵にここに置いてくれって直訴してる? あれ?俺達、ここに何しに来てたんだっけ? 泣き止まないサリエルの背中をさする伯爵、傍目からみると今日は良いオッサンのように見える。 伯爵が泣きぬれた紫色の瞳から零れた涙を太い指で拾い上げて優しく言う。 「サリエルは泣き虫で可愛い…、放っておいて悪かったな…、よしよし。」 おおおおっっ!!!この流れはっ!! サリエルで決まりだなっ!! よっしゃあああぁぁぁっ!!! 嬉しくて飛び跳ねそう!! 気配を消して後ろに下がろうとした俺の耳に不可解な言葉が入って来た。 「ザフキエルはサリエルを介抱してあげなさい。ラティエルはこちらへ。」 あれ?なんか俺、呼ばれてね? どういうこと?と顔を上げると伯爵とガッツリ目が合ってしまった。 …やっぱ、俺か…うんうん通常モードが最悪だもんな。 猫が笑った顔みたいに目を細まって開けられない、手招きされるままにベッドに向かう俺。 これからはエース2匹の健康管理は俺がやると誓った。

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