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第53話 [ラティエルの受難]⑥ 客人

「俺様に指一本触れるんじゃねぇぞっ!!お前は黙って寝てろっ!!」 俺様オッドアイのアリエルに吠えられながら、ベッドの上で押し倒されて腹の上に乗られて狼狽える伯爵。 その両腕はハミエルとフェヌエルは赤色の瞳の双子に押さえつけられている。 下半身だけをガンガン脱がされて、アリエルに襲われそうになっているというか、襲われている。 俺様オッドアイのアリエルが、夜伽に呼ばれないのがよく分かった。サンタルフォンの強引さとは違うヤバさでサンタルフォンが普通に見える。 赤色の瞳の双子と同じく鑑賞用なんだろな…、でも、まあ困ってるようだけど伯爵がなんか嬉しそう。 遠目に見てヤってる感じだし、たまには、ありなのかな?愛玩動物に無理矢理ヤられんのも。 ぼーっと見ていたら客人という男に「君が…」と声を掛けられた。 高そうな酒を嗜みながら葉巻を燻らす男は30半ばくらいの線の細い幸薄そうな風体、グレイの長髪を後ろに緩く結ってる。 酒を給仕する為に横に立っている俺に-ボソボソと静かな声で聞いてくる。 「君が伯爵が話していたラティエル…?」 「はい、私がラティエルです。」 「そう…。」 そういうとエロいメイド服の短いスカートをピラっと捲り上げた。 当然何も履いてないので、見えちゃうワケで慌てて裾を抑えた。 愛想笑いが引きつり気味の俺に「男の子なんだね…」とか言って控え目に微笑んでくる。 …クソっ!!!!ああ、ホント嫌!!! この人は誰?俺、コイツにこれからヤられないといけないの? 遡る事半時ほど前、本邸勤めの使用人に連れて行かれたのは客人の相手とか言うのに、いつも夜伽に時に使う伯爵の寝室だった。 おもてなしっていきなりストレートにヤるってこと? 何人いるんだよ、この中にっ!! 嫌過ぎて猫が笑った顔みたいに目を細まって開けられないまま、扉を開けて入ると中に居たのは、この幸薄そうな客人と満面の笑みの伯爵だった。 部屋の中央の豪華な円卓を囲んで酒を酌み交わしていた。 二人?伯爵とこの幸薄そうな人だけ?と周りを見ても他にはいないよう。 連れてきた三人に比べるとレアでも美人でもないけどトップメンバーなので決まりの口上を言った。 「伯爵様、お客様、ご機嫌麗しゅう存じ上げます。今宵は私達が伯爵様とお客様をおもてなし致します。」 顔を上げたら、伯爵の顔が微妙に焦っている。「ラティエルは必ず連れてこい」と言ってたのになんでそんな顔してんだろう?と思っていたらアリエル、ハミエルとフェヌエルが俺の横を通り過ぎて伯爵の元へ駆け寄って行った。 ドエロい格好の超美人のレア三人に囲まれる伯爵は嬉しそうだけど、何か困っている。 ていうか、俺っ!!出遅れているじゃんっ!! 今からでも伯爵の所に駆け寄るべきかと悩んでいたら、レア三人にモテている様相の伯爵が俺を手招きして言う。 「ライド―ル子爵殿、この子が今日私がお話ししたラティエルですぞ、本当に恥ずかしがり屋で大人しい子ですが、これがもう子爵殿の薬を使うと豹変しまして、なんともかわいらしく…。」 「へぇ…この子が…。」 「どうぞ、その様をご覧になられて下さい。私は…久々に、この子達と楽しみます。」 伯爵がそう言って、アリエルの腰を抱こうとしたら手を叩き落とされた。 アリエルに「お前が触るんじゃねぇ!!」と凄まれて、三人に部屋の奥にある天蓋付きの豪奢なベッドに連れ込まれた伯爵。 なぜか客人の前で愛玩動物に襲われる姿を晒して、今に至る。 気まずいまま残された俺と幸薄そうな客人があられもない姿の伯爵を眺めている。 「男の子なんだね…」の後に何も話しかけてこないし、触っても来ない。 …何?俺から誘わないといけないってことか? 伯爵達が居るベッドと俺達がいる円卓を挟んだ奥に、今日はもう一つベッドが運び込まれている。 この客人をあのベッドに俺が連れ込んで…? 嫌だけど、仕事だからと頬杖ついて伯爵の痴態を眺めている客人の腕を掴んだ。 面長の幸薄そうな顔が俺の方を向いて、ボソボソと俺に言う。 「…人の見ていて興奮でもしてきたの?」 …してねぇよっ!!お前がなんにもしないから、誘ってあげてんだよっ!! 怒りで愛想笑いがピクピクと引きずっていると、また短いスカートをピラっと捲り上げて「…興奮してないね」とかワケわかんない事を呟いてきて、増々イラついた。 この人何しにきてるんだろう?と思っていたら酒の横に何本か置いてある昨日飲んだ媚薬の小瓶を俺に差し出し「飲む?」と聞いてくる。 さっき伯爵が「子爵殿の薬」とか「豹変する様」とか怪しげな事を言っていたのを思い出した。 媚薬で頭がおかしくなっている俺がみたいのかな? 最悪…!!でも仕事だしっ…!! 嫌々ながら受け取り小瓶に口を付けると幸薄そうな客人が立ち上がりボソボソと俺の耳元で囁いた。 「それ、薔薇の香料しか入ってないんだけどね…。」 驚いて飲んでしまった俺の口元からは確かに薔薇の香りがする。 薔薇の香料しかって?どういうこと? 困惑している俺はそのまま幸薄そうな客人に肩を抱かれて、もう一つのベッドに連れていかれた。

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