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第55話 [ラティエルの受難]⑧ アリエルとラティエル ♥♥
「髪…綺麗だね…。」
客人が頭を腕で支えて横寝向きの姿勢で俺にボソボソと言う。
やっと俺をベッドに横たえたというのに何故か悠長に俺の髪を手に取り観察している客人。
俺の長いプラチナブロンドを長い指の隙間からサラサラと持ち上げる。
「コイツになら抱かれてもいいかな」と気持ちが盛り上がっていたのに、何もしてこないから気持ちが冷め始めた。
さっきの「これは本物の媚薬」とか言っていた飴玉も、きっとただの飴玉。
伯爵に媚薬らしきものを飲まされた時と全然違う、至って普通、全然興奮しない。
少しひんやりしている長い指が俺の頬を触ったり、唇をふにふに押したりするだけで何もしてしない。
…なにしてるんだろう?この人は、俺から積極的に行くのを待っているのかな?
伯爵は小汚いオッサンだけど自分からガンガン触ってきて無理矢理コトを進める野獣のような男だけど、この幸薄そうな人は一体何?何故なにもしないっ「君となら出来そうだよ」とか言ってたのにっ!!
イライラしている内に向こうのベッドから俺様オッドアイのアリエルが切なさそうな声を上げ始めた。
赤色の瞳の双子に押さえつけられた伯爵の上に騎乗して、自ら腰を打ち付けているアリエルの口ら漏れ出る声が甘く淫らになって行く。
彼の光るダークブロンドがふるふる震えて動きが止まった。
甘く荒い吐息を吐きながら「…ハミエル、フェヌエル、もういい手をどかせ。」と指示して二人の拘束を解かれた伯爵の右手を手に取り自分の唇へ押し付けた。
乱れたダークブロンドの隙間から気高さを孕んだ緑と青の瞳が、高揚した面持ちの醜い男を捕らえ伝える。
「…神に仕えし俺を攫ってきた、お前…。今度はお前が俺に仕え奉仕しろ。」
気位の高い高貴な獣の様なアリエルの赤い舌が太く醜い男の腕を舐めあげた瞬間、堰を切ったかのように勢いよく伯爵が身をを起こし、乱暴に大きく開かせた脚の間に大きく肥えた体を割り込み猛然と攻め立てる。
醜い大きな男に犯されているのに、その端正な横顔からは悲壮感は全くみられない。
激しく揺さぶられるしなやか肢体をから、伸びる両手が男の首に回り切なげに訴える。
「…!!あぁぁっ…!!そうっ!!…汚すんならッ、もっと醜くっ…!!!!」
訴えと同時に男の頭を引き寄せて、惜しげもなく艶めく唇を押し当て震えながら懇願する。
「イク…ッ…もうッ…イクからッ、な…中にッ出してッ汚してッッ…!!!!」
煽情的に潤む色違いの瞳に懇願されて拒む理由などは無いと、大きく開かせた脚に強く体を打ち付けた末に、醜い唸り声を上げて動きは止まった。
脱力し虚ろな様子でベッドに身を預けるアリエルは何故か少しだけ悲し気な顔をしていた。
「他人の性交って覗く機会がないから、少し昂ぶるね…。」と俺の後ろからボソボソと客人の声が聞こえて我に返った。
暇すぎて思わず見入ってしまった。ていうか俺様アリエルが仕事しているとこを始めて見てしまった
性格に難があっても元々が超美人だから、うまく手なづければカシエルとサンダルフォンに次ぐ逸材な様な気がする…。
…って、伯爵終わっちゃったじゃん!!この客人は、やるの?やらないの?
伯爵は終わるとそのまま寝るか、どこか別の部屋に行くし、そこで俺達は退室するから、このままだと俺一人がこの客人とずっとここに居なくてはいけない。
俺の横に横たわっている客人に体を摺り寄せて、おずおずとヤる気になっているか確かめるために股間に手を伸ばし触ってみたけど、勃っていない。
えっ?さっきの見てて勃たないの?
俺でさえ勃っているのにっ!!!!
信じられないものを見るような目で幸薄そうな客人の顔を見ていたら目があって、すごく気まずい。
目を反らす俺にボソボソと話しかけてきた。
「僕は若い頃に色々とやり尽くしてしまって、中々興奮しないんだよね。媚薬の研究は趣味と実益も兼ねているけど、本当に効くものは副作用があって体に悪い。まあ、性的興奮なんて気持ちの問題だから…。まあ、極々微量に混ぜてはいるけどね…。」
…その極々微量が俺に効いたのかな?
いやいやいや、そんなことは今はどうでもいい。
やるの?やらないの?やらないんなら俺も帰りたいんだけど。
聞くしかないから、聞いてみた。
「…あっ、あの子爵様は…その、しないのですか?」
「君はしたいの…。」
「えっ?…ええ、まあ…。」
(積極的にしたくはないけど、仕事なんで。)
「じゃあ、しようか…。」
勃っていないのにどうやってするの?それともこれから勃つの?という疑問のままにレモングラスの香りに包まれながらキスをしていたら、短い俺スカートが捲り上げられて少しひんやりする手で客人が俺のモノを扱き始めた。
…!!!えっ?何してんのっ客人!!!
「僕は若い頃に色々とやり尽くしてしまって」とか変な事言うだけあって、ヤバいほどのいい手つきをしているっ!!
困惑のまま快感でビクつきが止まらない俺、気持ちいいけど怖い!!
幸薄い客人のサラサラとした乾燥気味の清潔な肌が俺の頬に当たり、耳元でボソボソと囁かれた。
「もう少しだね、射精していいよ…。」
扱かれて先端部分から微量に漏れ出すヌメついた体液が、俺の起立した陰茎に行き渡ってグチョグチョと音を立てている。
恥ずかしいのと気持ち良さで息が上がる俺を客人が優し気な顔で見つめている。
もう、我慢できないっ!!客人の服にしがみ付いて先にイかせてからヤるタイプなのか聞いてみた!!
「あのっ!!もうっ出ちゃうんですけどっ…っ!!子爵様もッ、この後するんですよね…ッ!!!」
「…んー、今日は勃ちそうもないから、君がイくの見てから帰るよ…。」
「ちょっ…!!なんでっッ!!えっ…ッッ!!!!」
……!!!…!!…ぁ…ぁぁ…!
昨日も散々射精したのにっ…!!
今日も、すごく…出た…、昨日より気持ちいい…。
どエロい黒色のメイド服に身を包み、ベッドの上で息荒く脱力する俺。
やばい…、この客人半端ない手技持っている…、達人…?
俺を射精させて満足したのか身支度を整えて帰ろうとする客人が、俺の耳元で嬉しそうにボソボソ言う。
「君のイク時の顔見てたら、久しぶりに少し勃ったよ…。」
じゃあ、ヤってけよ…。
そう思っている俺の頭を一撫で、なんだかよく分からない客人は帰って行った。
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