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第57話 〔長い夜の秘め事〕① カシエル×サンダルフォン

「疲れた…。」 ここではイエロートパーズ・カシエルと呼ばれている俺は、酷い風邪から回復したが猛烈に疲れている。 俺に風邪を感染させたサンダルフォンが原因だ。 久しぶりに仲間がいる伯爵の愛妾達の待機所に戻ってこれたけど、サンダルフォンが俺にピッタリくっついて離れない。 俺達が休んでいる間に、とてつもない苦労をしたであろうラティエルが眉間にシワを寄せながら俺達を「何かあった?」という目で見てきていたたまれない。 親切心というか義務感でサンダルフォンの看病をした自分にイラ立つ。 風邪を引いた俺達は仲間に感染させないように、西の端の別邸の端にある小さい寝室に隔離されて数日を一緒に過ごした。 事の始まりは、近頃フラフラと外に抜け出しているサンダルフォンがずぶ濡れになって帰ってきたことから始まる。 当たり前のように風邪を引き、皆に感染させないように隔離された。 いつも元気過ぎるくらい元気なヤツなので可哀そうになった。 細身で色素の薄い彼、弱ると死ぬのではないかと思う位に儚い雰囲気を出す。 積極的に看病していたら、俺も程なく感染し二人で隔離された。 小さい寝室に二つのベッドが並んでいる、ドア近くのベッドには、咳をする度にもふもふした赤毛が揺れるサンダルフォンがコットン布団を目深に被って横になっている。 水が入ったポットと二つのコップが置かれたサイドテーブルを挟んだ隣に俺が横たわるベッドがある。 閉められた窓に掛かるカーテンから透ける光が明るい、夕方になってはいないけど丸一日は熱と悪寒に侵されている。 結構な高熱が出て苦しく唸り声が漏れる俺に、隣のベッドからサンダルフォンが謝っってきた。 「ゴホッ…、カシエルごめんね…。」 「…俺が看病したくて、こうなったんだから…謝らなくていい。」 「カシエル、ゴホッ…僕が温めて上げるよ…。」 フカフカしたコットン布団を掛けていても寒気が止まらなかったので、二人で寝た方が暖かいかなと思ってサンダルフォンと一緒に寝ることになった。 枕を並べて寝ているとサンダルフォンがピッタリとくっついてきて、「ゴホッ…、弱ってるカシエル可愛い…。」とか言い出してきた。 って…、何を言い出すんだ、この赤毛は…。 嫌な予感しかしない…。 サンダルフォンが通常運転している…。 俺は、熱で動けないのに…、コイツは回復しかかっている。 弱っている所を見せると襲われそう…。 もう少し動けたらベッドから彼を押し出すのだけど力が入らない、大丈夫そうな顔を作って話しかけた。 「だいぶ暖まってきたから独りで寝るよ…。サンダルフォンも自分のベッドに戻って…。」 「ゴホッ…、二人で寝た方が早く治るって!」 細いのに腕力があるサンダルフォンにグイッと引き寄せられて向かい合わせで密着する形になった。 頭が彼の腕で抱きかかえられて、顔は彼の胸元に押し付けられる。 サンダルフォンは男だから当然胸など膨らんでもいない、平らな胸元に顔を当てながら、なんで男同士で密着して寝なきゃいけないんだと思うけど、撥ね退ける元気がない。 「…信じるけど、襲うなよ。」 「そう言われると、ゴホッ…、襲いたいな。」 まずい、本格的にまずい…このままだとヤられる…。 逃げようとしたけど結構な力で頭を抱えられていて動けない、「かわいい」とか言いながら俺の頭に顔を擦りつけられてるし、熱ががなかったら思いっきり殴ってるのに、どうしてくれよう…。 体調の悪さと貞操の危機にイラついていると笑いを含んだサンダルフォンの声。 「ウソだよ、ゴホッ…、カシエルは仕事の時しかしないんだよね。なんにもしないから、寝ようよ。」 …本当かな…? 「僕もまだ治ってないし…、ゴホッ…、このままでも可愛いし。」 …治ったら襲うのか? 「誰かと一緒に眠るって、ゴホッ…幸せだね…。」 そう言って暫くすると寝息が聞こえてきて、俺の頭を抱えている腕の力が緩くなり、顔を上げるとスヤスヤと眠っていた。 よかった…、サンダルフォンが「襲いたい」とか言うと冗談に聞こえない。 サンダルフォンは俺が迎い入れられた時には既にいて、あの頃はレリエルとサンダルフォン、サリエル、アリエル辺りが夜伽のメインメンバーだった気がする。 彼の事は赤毛の元気な淫乱っていうことしか知らない、なんだかんだ言ってもレリエルが居なくなってからは一緒にいることが多くなった。 知らなくてもいいけど、もう少しサンダルフォンに興味を持とうかな? まだ二人きりで一緒に居ないといけないし、誰かと一緒に眠るのは家族と別れてから初めての事、抱き抱えられて眠るなんて守られている感じで安心する…。 高熱で思考までもが弱っている俺は、猛獣に食われかかって寝ているのことに気づかず、そのまま眠りに落ちた。

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