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第68話〔長い夜の秘め事〕⑫ 水晶の雨

「あは…♡、ねぇ…、どう?ステキ?キモチ良い?」 兵士の腹の上に跨り、艶めかしく腰を動かし問いかける黒髪の美女。 彼女の腹の中で扱かれて擦られている兵士は射精を堪える限界を迎えている。 「気持ち良いですッッッ!!あッ…、貴女様はッ?…ァ…ッ…!!!」 美女に淫らな声を上げさせる命令を受けた兵士が苦悶して首を横に振った。 緩く波打つ黒髪の中にある緑の瞳が幸福に蕩けて兵士を見つめ、彼女に伸ばした腕を手に取り赤い舌で舐めあげた。 「ふふ…、かわいい…♡、イキそうなんだ、良い子…♡」 「動かないでッ…!!あッ…!!あ…!!、あああぁぁっ!!!」 美女が魅惑的に微笑み、懇願を聞かずに腹の奥へ誘われた刹那にビクビクと震える兵士、白濁した体液が繋がっている箇所から漏れでしている。 快感で震え脱力する兵士から体を離して立ち上がり、黒髪をかき上げて「ふふ♡次は、誰?」と問う美女に群衆の男達から吠えるような歓声が上がる。 「いいぞぉぉ!!」「最高だァァっ!!!」「俺も相手してくれぇぇッ!!」「…▲◎×!!!!」「…Θ■Ψ×!!!!」 アルドロスが始めたセックスショウは、美女が兵士達を艶めかしく蹂躙し陥落させる様相になっていた。 淫らな声を上げているのは兵士で、アルドロスは自分に屈服する男達を緑色の瞳を細めて楽しんでいる。 もう10人を超える兵士の相手をしたのだろうか、微笑んではいるが疲れの色が見え始めた。 騎士団長バートンは兵士達の不甲斐なさに憤りながらもアルドロスが音を上げるのを待っている。 熱狂する群衆の目を盗みキャストと従業員の避難は完了した、後はアルドロスを救い上げるだけになっていた。 あの場から、どう助け出すのか…。 枯れない薔薇のロザリーとエルダと共に舞台袖からアルドロスの様子を見ている僕、手を繋いでくれているロザリーに「助けられるかな?」と聞いたら「全然、大丈夫!まあ、アルドロスにはこのまま死んでほしいけど!」と明るく返ってきた。 エルダも「ホント悪運が強い、アルドロスは多分殺しても死なない。」とワケの分からない事を平気で呟く、アルドロスの悪口を言って大丈夫なのかな?とザリタスの姿を探したけど、少し前まで居たはずなのに居なくなっていた。 「次は、誰?」の問いに結果が見えているからか兵士の誰も名乗りを上げない、気だるげに溜息をつくとアルドロスが騎士団長に歩み寄った。 「もう疲れた、誰も名乗りを上げないなら帰って頂きたい。」 「…ッ!!貴様らッ…、だらしがないぞッ!!!」 「騎士団長様が自らご教授を示されてはいかがでしょうか?」 「貴様の様な汚い女と何故私がッ…!!」 「汚いね…、本当に汚いのは誰だろうね?私だって好き好んで動物の本能に準じた仕事をしているワケではない、生きる為に選ばざるを得なかったと言っても良い。こんな哀れで汚い者が稼いだ富を掠め取ろうするお偉いさんの方が余程汚いと思うが、どう考えているか教えて頂きたい。」 「またしても王政を愚弄するのかッ!!」 「そんなつもりはない、疑問に思っているだけだ。同じ人間同士なのに何故、奪う側と奪われる側に分かれなければいけないのか、生まれ落ちた場所の違いで本質を見極めずに優劣や決まり、可能性や選択肢が平等に与えられないのは何故なのか、生まれ落ちた場所が悪いと幸福に生きたくとも簡単に幸福を手に入れることが出来ないのは何故なのか…。」 切々と黒髪の美女が騎士団長に問いかけ答えを待つ、熱狂していた群衆もまた王政側の見解を聞きたいと耳を傾ける。 静まる館内、答えられずにいる騎士団長に失望の溜息が漏れる中、一匹の黒猫がアルドロスの足元にしなやかに身を絡ませた。 白い手が黒猫を愛おしそうに抱き上げ、腕に収めると張りのある声を上げた。 「本日この場を持ってアンデルセンは仕舞いにするッ!この中に欲しい物があるのならば全て持ち去って良い!理不尽な権力者には渡したくはない、全て、全て、何一つ残さずに持って行ってくれ!」 アルドロスの号令の元、群衆が館内の略奪を始め混乱する中、騎士団長が兵士達に「略奪を止めろ!!」と叫び剣を抜いた。 黒猫を抱くアルドロスに詰め寄り怨嗟の声をあげた。 「貴様ッ…、許さないぞ!」 「汚いと蔑んだ者が使った物など不要だろ?欲しければお前も持っていって良いぞ。」 アルドロスの挑発に騎士団長が叫び剣を振り下ろした! 「死ねェェェェェェッ…!!!」 美女に向かう刃の行方と確定的な残忍な結末に顔を背けたくなる刹那、彼女の腕に抱かれた黒猫が姿を溶かし黒色の巨大な醜い姿の悪鬼に変貌した。 突如出現した悪鬼の恐ろしくも醜い姿に皆が恐怖の叫び声を上げ、騎士団長バートンも同じく悲鳴を上げて腰を抜かしている。 悪鬼へ嬉しそうに飛びつく美女、自身と同じ大きさもある太い腕に抱かれようとする。 豊満にして嫋やかな美女を腕に抱き上げる悪鬼、騎士団長が問いかけた。 「貴様ッ…、やはり悪魔を…ッ、それとも貴様が…悪魔なのかッ!」 「私は人間…、そして、この子は悪魔ではない、私の大切な仲間だ。」 左右の大きさが違う悪鬼の赤色の瞳と美女の緑色の瞳が見つめ合う、人外の者と睦会う美女に恐れは感じられない。 抱かれて寄り添う姿は親愛に満ちている。 悪鬼の黒色の頬を白い手が優しく撫でた瞬間、隆々とで盛り上がった背から大きな翼が生え、悪鬼の巨体が宙に浮かび吹き抜けの上階へと舞い上がった。 そして綺羅綺羅と吊るされていた水晶を雨の様に降らせながら屋根を破って空へ消えた。

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