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第74話 〔長い夜の秘め事〕⑱[終] 長い夜の果ての先♥

「ヤるんなら、ちゃんとヤるからな。」 自分に気合を入れる為にも、よく分からない決意表明をした。 仕事で女の子の姿をしているが俺は男で『伯爵の宝石』序列1位のカシエル、目の前のよく分からない苦労をして来たであろう赤毛も男で『伯爵の宝石』序列2位のサンダルフォン、何故か男同士で性交をする流れに陥っている。 性交をするなら女の子とするのが良いと思う気持ちは全然変わらない、変わらないけど赤毛が泣くならしょうがない、俺は泣かれると弱い、性別を気にしないで客観的に見ると『伯爵の宝石』なだけあってサンダルフォンは可愛い。 もふもふした赤毛でシルバーの瞳、色も白くて細い、貴族が飼っている猫みたいな雰囲気、さっきまで泣いてたはずなのに「遊んでくれるのか?」みたいな期待がこもった目をしている。 涙は騙しか?、泣くんなら、ずっと泣けよ! サンダルフォンよ、お前も男だろ?、今までの人生で何があった? 勢いのままに自分からキスをしたけど、唇を離した瞬間に素の自分に戻りかかっている。 ベッドの上で向かい合って座る俺達、「カシエル?」と名前を呼ばれてビクついた。 ああっ、もうっ!、腹を決めろ! 視界を遮るブラウンの巻き髪を耳に掛けた。 俺は『伯爵の宝石』の中で一番冷静で賢い男、顔色一つ変えずに振舞わなければ格好が付かない! サンダルフォンの頬を両手で掴み宣言した。 「ヤるんなら、ちゃんとヤるからな。」 自分に気合を入れる為の決意表明、サンダルフォンがキョトンとした顔をしている、これ以上何か言ったら焦っているコトがバレそうだからキスしたままベッドに押し倒した。 細いけど柔らかい体、従順な態度に不覚にも欲情してきた、俺が伯爵にされているコトをすけば良いだけ、脚を開いているサンダルフォンがが夜着の裾で陰茎を隠している、「女の子が良い」と言った俺への気遣いかもしれない。 尻穴に俺のを突っ込めば良いと思ってたけど、さすがに「痛いよな」と思いサンダルフォンに指を舐めさせた、赤い舌が従順に指を舐める、額を隠す赤毛の前髪があどけなさと幼さを残している、何も知らない人は彼が性欲を持っているなど思わないだろう。 一年前の俺だって、今こんな生活をすることになるなんて考えていない、性欲と肉欲に塗れた生活をすることになるなんて、希望無き日々の果ては刹那の快楽に縋るしかないのだろうか? 「も、だいじょうぶ、早く…、おねがい…。」 穴を緩める為に挿れた指、人差し指と中指を十分に飲み込みヒクついている、切なさそうな目を向けられて心が決まった。 陰茎を穴にあてがい腰を進めると難なく挿入出来た、温かくヌメっている、この穴に陰茎を擦りつけ快楽を得ればバカげた遊びも終わりになる。 開かせた脚の間に割り込み抽挿を始める、肉壁に擦れる陰茎が蕩けるほどに気持ち良い、サンダルフォンも俺が動く都度に小さく喘いでいる、性欲を満たすだけの意味の無い行為、それでも興奮する、快楽を求めて激しくなる動き、夜着の裾を押さえているサンダルフォンの手を掴んだ! 「サンダルフォン、イきたいっ!、お前はっ?」 「もう?、カシエル…、かわいい…♡」 「かわいいとかじゃなくって、お前もイけよっ!」 「じゃあ、もっといっぱい挿れて、奥を突いてくれる?」 今すぐにでも射精したいのに、無茶なコトを言ってくる! 穴の奥へ挿れるだけで我慢出来ないほどの射精感が込み上げて来る、堪えるのと快楽で切ない、「もう、もう少しっ!」と言うサンダルフォンの切なさそうな声に首を振りたくなる、グズグズに溶けている結合箇所、これ以上擦り着けたら射精してしまう。 動きを止めてサンダルフォンの夜着を捲り上げ、勃っている陰茎を握った。 「サンダルフォンっ!、前でイけよっ!!」 「えっ?、カシエルが女の子がいいって言うから女の子の気分なのに。」 「もお!、うるさいっ!、何でもいいからイけ!」 若干抵抗してくる手を払いのけて陰茎を扱くと「強引すぎ、こんなイキ方は嫌ぁぁぁ!!」と喚きながらサンダルフォンが射精し、その後「イったばかりだからぁ!」と何かプルプルしているサンダルフォンを押さえつけて俺も射精した。 気持ち良いけど何か納得できない、壮大な罠に嵌った気分。 こうして、とんでもなく長い夜が終わった。 ハッキリ言って後悔しかない、どうしてくれようサンダルフォン。 汗をたくさん搔いたからか、風邪が治ったような気はするが気分が晴れない。 「疲れた…。」 久々に戻って来れた愛妾の待機所、白いドレスに整えた巻き髪、どこからどう見ても清楚系の美少女だが美しい所作などする気になれない、「ドカっ!」と音を立てて椅子に腰かける俺、サンダルフォンが嬉しそうに抱き着いて来るけど払いのける気力が無い。 仲良く見える俺達をラティエルが「何かあった?」という目で見てきて居たたまれない。 サンダルフォンの元気そうな声が耳元に響く。 「カシエルっ!また風邪いっしょに引こうねっ!」 「もう、お前の看病はしない、引きたいなら、お前一人で風邪を引け。」 「一緒にが、いい~!」 長いもふもふした赤毛が俺の頬を掠める、チラと見たシルバーの瞳は元気そのもの、インキュバスとの話は嘘だったとしか思えない、でもサンダルフォンが噛み千切った手の甲は包帯を巻いた下から出血し赤い染みを作っている。 嘘か本当か分からない。 春近い暖かな陽光が部屋へ差し込んでいる、窓の外に見える木々の緑もキラキラと美しい、ここに居ると冷たい月光差し込む静かな部屋での出来事は高熱が見せた夢ではなかったのかと思える、そう思いたいけどサンダルフォンが過剰に俺に引っ付いている現状、夢ではないようだ。 げんなりしている俺のブラウンの巻き髪を手に取りサンダルフォンが幸福そうに呟いた。 「カシエルの髪色はザリタスと同じ色なんだ、優しい色、安心する。」 ザリタス…、サンダルフォンを優しくするだけして居なくなったインキュバス、自分のお気に入りが死んだからと言って二度と姿を見せないとはどういう了見だ、嘘話の中のヤツだけど腹が立つ。 「忘れろ、二度と会いに来ないヤツのコトは思い出さなくていい。」 「でも、優しかったよ。」 「本当に優しかったら、漁村の家に戻っいるし、お前を探し出している、薄情なヤツは忘れろ、忘れれば体が成長するのだろう?、ブラウンの髪色は俺だ、俺の方が優しくて良いヤツだ。」 「ふふ、ブラウンはカシエルの髪色、優しいのはカシエル、カシエルを好きになって僕は大人になるよ。」 「…ん、ちょっと待て、お前、近衛兵と付き合っていると言ってたよな?」 「ロザリオのコト?、彼も優しいけど黒髪なんだよね。」 「優しいんなら、そっちに可愛がってもらえよ。」 「カシエルも、いい!!」 「カシエル『も』ってなんだよ!、『も』って!!」 「あは…」 同情した俺がバカ、サンダルフォンは普通に淫乱、嘘か本当か分からないけど。 モメ出した俺達に仲間達が集まってきた、目が痛くなるほど美形率が高い、美形しか成れない『伯爵の宝石』の仲間だから仕方ない、こんなに綺麗でも今いるのは全員男なんだよな、この世界は間違っている。 皆、同じ年頃、大人になるのには時間がかかる、美しいけどキラキラと輝く陽の中で幸福のままに生を享受することは出来ない。 俺達は長い夜を超える仲間、長い夜を幾つも超えた果て先、皆で大人になれる日が来ると俺は信じている。

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