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第79話 木綿のヴェール④ 銀髪の姫様♥

「今一度、君が男であることを確認させて貰えないか?」 初めて入った本邸の客室に取り残され、僕を選んだ司祭様が口を開いた。 いつもとは違う紫紺のドレスを纏い伯爵の客人の相手をすることになった、聖職者が好む紫色の瞳だったのが選ばれた原因だ、『伯爵の宝石』なのだから伯爵様の命令は絶対で拒否することは出来ない、伯爵の元に来る前も身を開いて生きていたのだから抱かれる事は厭わない、ただ気になるのは伯爵様と司祭様がどこまで話が出来ているかの一点だった。 一夜限りなのか?、それとも、このまま譲渡されるのか? 賑やかに客室から伯爵様達が出て行き、僕に向かってにこりと微笑むオルザナート司祭と二人きりになった、小柄で小太りの伯爵様とは違い背が高く、ふわりとしたジュネーヴ・ガウンを羽織っていても頑強な体躯をしているのが分かった、力の強い大きな男は乱暴で嫌いだ、聖職者なのもあってこの人には気に入られたくはない、俯き加減になる僕に声が掛けられた。 「今一度、君が男であることを確認させて貰えないか?」 聖職者は女性と触れ合う事を許されていない、騙されて失脚することになった聖職者も居ると聞いたことがある、頷いて首後ろにあるリボンに手を掛けたら「下を見せてくれるだけで良い」と止められドレスの裾を上げる事になった。 下着を付けていない性器を晒すと手招きされ近づいた刹那、強く抱きすくめ興奮した様子で唇を押し付けられた、貪るように吸われる舌、腰元にあった手はドレスの裾を捲り上げて素肌の尻に伸びている、尻の割れた先の穴をなぞると指先に力を込めて尻穴ををこじ開ける、暫く伯爵様の相手をしていなかったから体内に入り込む指の感触に敏感になっている、抗っても仕方ない、身を固くしても体を傷つけるだけだ、挿入しやすいように股を開くと男の太い指が深く入り込み体がビクついた。 グチグチと腹の中を擦られると嫌らしい事に息が上がってくる、吐息の先に居る男に縋り付き尻穴を嬲られる感覚に身を任すより他は無い、気に入られたくはないが喘ぎ声が口から漏れる、口内に入り込む温かい舌の感触が心地よくなって来た、絡む舌を吸っている最中に離れた唇、見上げると司祭様の微笑みが目に入り、僕の頬を撫で上げ嬉しそうに言った。 「可愛らしい…、こうしいると男だとは分からないほどだ…」 「ありがとうございます…」 「ザザデルドの聖歌隊では演劇もすると言うが、さぞかし美しい姫様を演じたのだろうな。」 「その様な時もありました…」 「どうだろう?、私の聖歌隊でも演じてくれまいか?」 「あっ…いえ…、僕は…歌えないので…」 「声は出ておるではないか?」 「…、…、…」 教会の名を広める為に大衆の前で行う演劇には女性の役を演じる者が必要で僕がその役を担っていた、しかし僕の声は高音が出ず、歌っている風に装う僕に合わせて美声を響かせていたのは友のリオンだった、リオンは美しい声を永遠に留める為に去勢しカストラートになった、そして僕も女性的な美しさを留める為に去勢を促されていた。 男として生きれなくなる教会には戻りたくない―― 伯爵様と司祭様はどこまで話が出来ているのだろう? このまま気に入られて譲渡されたら去勢の後は女性の代わりとして慰み者になる未来が待っている? 後少し声変わりが始まるまで『伯爵の宝石』を務めたら邸の使用人に成れるのに、抱かれている体は温かいのに心が冷えて恐ろしくなり涙が溢れると、司祭様が慌てて「聞いてみたかっただけだ、嫌な事でも思い出させてしまったか…」と袖で涙を拭いながら「銀髪の美しい姫様に優しゅうしますので、どうか涙を納めて下さい」と背を丸めて僕に語り掛けた。 男だと確かめたのに姫様? その様子が伯爵様が好きな小芝居に似ていて少しだけ怖くなくなった、優しくされれば嬉しくなる、大切にされていると感じれば嬉しくなる、ずっと冷たくあしらわれていた僕には見せかけであっても嬉しい、僕の瞳を覗き込んでいるのは見知らぬ男だけど今宵は愛そうと思った。

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