2 / 137

第2話

 登校のピーク時とあって昇降口はごった返していた。さらに年度初めの風物詩だ。掲示板にクラス割の一覧表が貼り出されて、生徒が押し合いへし合いしながら自分が何組かを確かめる。  小柄で華奢な空良は、人垣に埋もれてしまったきり身動きがとれない。大和はそれを尻目にすいすいと一覧表を見にいき、ついでに空良を引きずり出すと、階段のほうへ顎をしゃくった。 「俺ら、二年四組。担任は生物の沢井」  空良は、こくりとうなずいた。海鵬学院という新天地で友だち作りから高校生活をやり直すわけで、ドキドキする。その点、大和と同じクラスというのは心強いが……、 「俺の分もノートを取るとか、掃除当番を代わるとか。いろいろ便利でラッキーな?」  ラッキー、と鸚鵡(おうむ)返しに繰り返す。ニヤリとゆがんだ顔を見つめ返したところに、通学鞄を押しつけられた。 「手始めにそいつを教室に持っていっとけ」 「でもぉ、転校生は始業式の前に職員室に来るように言われていて……」 「逆らってんじゃねぇよ」  尻に蹴りをくれる真似で急き立てられた。二年生のフロアは二階で、空良は人波に揉まれながら、とことこと階段をのぼりはじめた。  やけに注目を浴びている気がして仕方がない。ネクタイの結び方が変だとか、寝癖がついたままだとか、そういうことだろうか。  実際、注目の的だった。ただし、ちっこくて可愛いのがまぎれ込んでいるぞ、入学式の日にちを間違えた外部受験組の新入生か──等々と微笑ましく思う意味合いで。  ともあれ、こちらで押されてよろよろと壁際に避難し、あちらで行く手を阻まれてふらふらと一段下りるといった調子で、踊り場が遠い。  エンストしたように立ち尽くしていると、そこにがっちり型の生徒が駆け下りてきて、すれ違いざま勢いよく肩がぶつかった。  煽りを食って階段を踏み外した。手すり側の手は預かってきた通学鞄でふさがっていて、摑まりそこねた。と、もたもたしている間に(かかと)が宙に浮いた。  わっ、わっ、わっ! 空良は羽ばたくように腕を振り回した。だが完全にバランスが崩れてしまったあとで、勢いが止まらない。  通学鞄を抱きかかえたまま、数メートル下の廊下めがけて真っ逆さまに落ちていく。

ともだちにシェアしよう!