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第4話

「階段はのぼるか下りる。落っこちるとか、おまえ、ハッシュタグ〝おバカ〟か?」  騒ぎを聞いて大和が駆けつけきた。そして姫抱っこ継続中というさまに気色ばむと、当麻の腕からなかばひったくる形で、空良を床に下ろした。 「ありがとうございました」  ぺこりとお辞儀をする空良に対して、 「いや、当然のことをしたまでだ」  当麻はあっさりと片づけて、すたすたと立ち去る。凛とした後ろ姿は、颯爽と馬を駆る騎士を髣髴(ほうふつ)とさせた。  空良はぽわんと当麻を見送り、 「あのな、生徒会の執行部は実質的に会長の親衛隊なわけ。おまえ、ロックオンされたぞ。平 和に暮らしたきゃ、当麻に二度と近づくな」  恐ろしい目つきで大和に睨まれたが、 「そうだ、これはちゃんと死守したよ」  にこにこと通学鞄を差し出すと、姫抱っこされやがった罰と称してデコピンを食らった。  ちなみに当麻遼一は切れ者と評判で、校則の中でも時代錯誤な条項の撤廃を公約に掲げて会長の座に就くと早速、学校側との交渉に臨み、前向きな回答を引き出したとのこと。  眉目秀麗、才気煥発、品行方正、成績優秀──などなどと枚挙に(いとま)がない、彼の愛称は無敵王子。  さて、始業式が終わったあとはホームルームだ。クラス長をはじめ、各種の委員が決まっていくなかで、空良はなり手がいない図書委員を仰せつかった。つづいて席決めのクジでは、窓際の最後列の席を引き当てた。  と、大和が怪しい行動に出た。出席番号三十五番の宮園を捕まえて、くじ引きの紙をこそこそと取りかえっこする。学食のカツ丼な、がめついぞ、という一幕があり、裏取引を持ちかけてワイロを要求された雰囲気が漂う。  数十秒後、大和は空良の隣の席にどっかりと腰かけると、聞こえよがしにぼやいた。 「あぁあ、クジ運がねぇな。内職はしづれぇけど、どうせなら教卓の前の席とか……」  と、顎をしゃくってみせた件の席には宮園の姿があった。 「授業中くらいおまえと離れたかったし?」    空良は上の空でプリント類をリュックサックにしまった。

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