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第6話
閑話休題。夕飯はたいがいひとりで、という環境で育ってきたことも相まって、空良は一家団欒 にあこがれていた。
家族で食卓を囲むと、単なる漬物でさえ格別おいしい。たとえ、よそ見をしている隙に、大和が空良の分の唐揚げを平らげてしまっていたとしても。
「テレビの、大家族に密着する番組があるでしょ、あれみたいだね。『うわ~ん、ちい兄ちゃんが唐揚げ盗ったぁ』」
空良が嘘泣きをしてみせても、大和はしれっとしたものだ。付け合わせのブロッコリーで、ふっくらした唇をつつく。
「野菜は、ウサギ顔のおまえの担当な」
ウサギ顔と、ぽかんと口をあけたところを狙ってブロッコリーが押し込まれる。
すると武流が、小松菜の胡麻和えの小鉢を空良の手元に押しやりながら話を引き取った。
「目がくりくりしていて、モフりたおしたくなるって意味だよ」
大ざっぱに分類すると、ヤンキー系の大和に対して武流は知性派という印象が強い。リムレスの眼鏡を押しあげると、重々しいものへと口調を改める。
「編入試験は合格点ぎりぎりだったらしいね。海鵬のOBの立場から忠告しておくと授業のペースが速くて、予習・復習を怠るとあっという間に落ちこぼれる」
「それな。定期テストで赤点とってみ? したら学院の地下牢につながれて補習地獄……」
「地下牢ってどの校舎の下にあるの、探険できる? 隠し扉とかダンジョンがあって、魔物が見張ってたりする?」
「アホか。な、わけねぇだろうが」
デザートは苺だ。大和が空良のそれをくすねるそばから、武流は猫なで声でこう言った。
「予習を手伝ってあげる、僕の部屋においで」
レンズの奥の瞳が妖しくきらめく。食洗機に洗い物を並べていく空良を回れ右させて、戸口へと押しやるのに、
「って、ことで、腹ごなしに俺も協力すっか。かあちゃん、ごっそうさん」
大和が伸びをしながら後につづく。
三人ともすっかり打ち解けて、とソファでくつろぐ小沢夫妻が仮に超能力者で、頭上の部屋を透視していれば、ショックのあまりぶっ倒れていたに違いない。予習と称するものの実態は、伏せ字とモザイクを要する代物 のオンパレードだ。
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