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第7話

 ここで小沢宅の間取りを説明しておこう。一階は広々としたLDKおよび夫婦の寝室、二階は独立した三つの部屋がL字型に並ぶ。  そのうちの奥まった一室へと舞台は移る。法律関係の書籍が本棚にぎっしりと並び、向学心に燃える学生の居室という(おもむき)がある空間に、そぐわないものがひとつある。  天井に固定されたフックがそれで、用途については工夫次第で無限に広がる。室内干しを引っかけるのに便利なのはもちろん、ロープを結わえつけてSMプレイに活用するのもだ。  逃走防止を図るふうに、おにいちゃんズは空良を挟んで敷居を跨ぐ。しんがりを務めた大和はすかさず内鍵をかけると、バリケードを築くように扉を背にして胡坐(あぐら)をかいた。  空良は、きょろきょろした。机と一対の椅子に腰かけるより、おお兄ちゃんとローテーブルを挟んで向かい合わせに座ったほうが、勉強を教わりやすいだろう。  新学期最初の授業はグラマーで、春休み中の課題に与えられた英作文を添削してもらっておけば、抜き打ちで指されても安心だ。 「あっ、教科書とノートを取ってこなきゃ」  と、(きびす)を返しても大和に阻まれるあたり、もはや袋の(ねずみ)。  おたおたしている間に武流はベッドに腰を下ろした。ノートパソコンを操作して画像フォルダを開くと、鹿爪らしげに切り出す。 「今夜の教科は生物ならびに保健体育だよ。空良は人体の構造について学ぶことが、まだまだたくさんあるからね」  そっくりそのまま同じ科白が、ゆうべも紡がれた。生物ならびに保健体育にしても本来のそれとかけ離れていて、お医者さんごっこの一種とカテゴライズするのが正しい。  空良は必然的に、いわば患者役を割り振られて、や、を受けた。それは衝撃の連続で、あげくの果てに知恵熱が出て寝オチした。

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