10 / 137

第10話

 さしずめ、お燗をつけるようにローションが温まっていくにつれて、躰の芯がむずむずしはじめた。シリコンがその真価を発揮して、うねうねとペニスを這い回る。それどころか新しい住み処を見つけたヤドカリのように、鈴口にもぐり込む。 「ひゅうぃ、いん……!」  初々しいペニスは、強力な刺激の前にひとたまりもない。腰が独りでにくねりだして、(みだ)りがわしいダンスを踊る。それでいてペニスがシリコンと程よく睦み合うように、容器の揺すりぐあいを加減してしまう。 「口がきけなくなったのかい? 改良点その二は、どうしたの」  武流がキーボードをカタカタと叩く。 「詳しくレポートする義務があるだろうが。おら、いっぺん見せてみろ」  大和がもぎ離すように容器をずらして、にやついた。横から覗き込んできた武流も忍び笑いを洩らす。 「えへへ、勃っちゃった……」  空良は腰を引き気味にした。もつれ合って蠢くシリコンに包まれて、ペニスがとんでもないありさまになっているのが、恥ずかしいという次元を通り越して人体の驚異に思える。 「タケ(にい)、こいつの性能を最大限に引き出すには動かし方もひと工夫じゃね?」  そう大和がうそぶき、8の字を描く要領で触手くん1号(仮)を行きつ戻りつさせる。蜜が泡立ち、それがローションと混じり合うと、シリコンがねっとりと吸いついてたまらない。 「みゅ、ぁあん……か、改良点その二は……ん、んん! 脳みそが痺れて変になるぅ!」  空良が涙ながらに訴えると、 「〝変になる〟では漠然としていて、細かいニュアンスが伝わってこない。その試供品が人体にどんな影響をおよぼすのか詳しいデータがほしいんだよ」  武流は大和とバトンタッチして、容器をへこませるという荒技を加えつつ、ひねる。 「ひ、ぃん……っ!」  感電したように、細っこい肢体がしなう。カットソーがはためいて、ぷりぷりした双丘が丸見えになる。  一瞬爪先立ちになり、(かかと)が落ちてよろめき、反動でまた爪先立ちになったあとで、再び踵が落ちた。

ともだちにシェアしよう!