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第12話

 濃やかに繰り返すにしたがって、タンポポの汁に似た粘り気のある雫が、ちっちゃな手をぬらつかせる。触手くん1号(仮)が誇るシリコンの群れがますますペニスに絡みつき、ローションが波打って、そのとき名案がひらめいた。 「容器、容器が透明だと視覚的に『うひゃあ』でドキドキかも……ふがふが」  舌打ちの二重奏が轟くとともに、口許に掌が覆いかぶさってきた。 「どうせならエロい科白を吐け、ボケが」 「同感だね。フリチンと靴下のコントラストが最高なのに、危うく萎えるところだよ」  実際、おにいちゃんズは貪欲だ。もっとスナップを利かせろ、タマを軽めに揉んで、と矢継ぎ早に指示が飛ぶ。  空良はシリコン地獄を堪えつつせっせと手を動かし、愛らしい顔を真っ赤にして努力を重ねた。栗の花のそれを思わせる香りが立ちのぼり、やがて三人は年若の順に達した。 「ふぅう、腱鞘炎になりそう」  空良は通称女の子座りに起き直ると、手首をぶらぶらと振った。精液にまみれたシリコンを一本ずつぬぐうさまは、泥団子をこねる幼児のようにいたいけない。 「今後も随時、モニターをやってもらうよ。ただし拒否るのはなし、いいね」 「タケ兄、よく撮れてるっしょ」  大和がパソコンをいじって、撮影したてほやほやの映像に〝十六歳の春☆オナホールデビューは夢色パラダイス〟とのタイトルをかぶせる。  空良は目がチカチカしっぱなしだった。両手で目許を覆い、そのくせ指の隙間からディスプレイをガン見していると、頭めがけて丸めたティッシュが飛んできた──後始末するのに使ったやつがつぎつぎと。 「喉が渇いた。氷増量でコーラな」 「僕はビールが飲みたいな。グラスを添えて、つまみも見繕ってくるんだよ」    すかさずベッドから蹴り落された。空良は尻餅をつき、おにいちゃんズを振り仰いだ。  しっしっと追い払われてしゅんとなり、次の瞬間こう思った。パシらされるのは末っ子の宿命で、心の距離が縮まった証拠だ。納得がいくとウキウキしてきて、ボクサーブリーフのウサギ柄と同様に顔がほころぶ。  そこで、どんな連想が働いたのか姫抱っこされた一幕が瞼の裏に甦った。  あの、鮮やかなお手並み! 女子なら一発でメロメロかも、とハーフパンツを半分ずり上げた恰好で固まった。いや、男子でも思い出しときめきとでも呼びたいもので、鳩尾のあたりがふくふくする。  ちょこんと突っ立ったきりでいると、後ろ頭に枕が命中した。

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