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第2章 生徒会長の瞞着

    第2章 生徒会長の瞞着  時計塔の鐘が昼休みを告げた。机をくっつけて弁当を広げるグループ、つれだって学食に行くグループ。四十人余りの高校生男子が、檻から解き放たれたように一斉に行動を開始するさまは壮観だ。  空良はトートバッグをロッカーから取り出すと、教室を見回した。出席番号一番の相原と目が合ってにっこり笑いかけたとたん、ぷいと横を向かれてしまった。  新学期が始まってからこっち、何度も同じようにつれなくされた。ひとことで言えば、クラスカーストの最下層でもがいていた。  海鵬学院の校風じたい排他的なのか、それとも空良自身がとっつきにくいやつという印象を与えているのか。小、中学校を通じてクラスのムードメーカーだったのとは大違いで、さすがにヘコむものがある。  窓の外を眺めやると、綿雲が青空にぷかぷかと浮かぶ。ピクニック日和に誘われて、トートバッグを手に教室を後にした。  同情的な視線が、しおしおと去っていく後ろ姿を追う。  大和は椅子の前脚を浮かせてふんぞり返ると、机の上に載せた足を勢いよく振りあげてから、だんっ! と打ち下ろして周りをビビらせた。  空良が学校で孤立するよう仕向けて、そのぶん僕らへの依存度を高めよう。武流の命を受けて、大和はクラスメイトにこんな圧をかけていた。  ──うちの可愛いのにちょっかい出したやつはマジにシメる。  今のところ順調だ、と大和はほくそ笑んだ。いじり甲斐のあるオモチャは、おにいちゃんズの共有の財産なのだから。  幸か不幸か、空良は陰謀に勘づいていない。最初に中庭を覗いてみると、噴水のぐるりに据えつけられたベンチはすべて埋まっている。  第一、わいわいガヤガヤとにぎやかな場所で、ぽつんとおむすび弁当──大和のぶんも空良がこしらえた──をぱくつくのは、ぼっちぶりをアピールするようで逆に嫌みったらしい。   隠れ家にもってこいの場所を求めて校舎をさまよったすえに、西棟の屋上にたどり着いた。  学校が丘の上に建っているだけに抜群の眺望だ。大きく伸びをした。潮の香りをほのかに含んだ空気を胸いっぱい吸い込むと、元気が出た。

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