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第14話

 髪の毛をなびかせて手すりに駆け寄る。  港に面して開けた街は明治の昔、外国人の居留地があり、風見鶏が目印の館、石造りの館、星霜を重ねた洋館群が異国情緒を醸し出す。甲板と桟橋に渡された色とりどりの紙テープが、ちぎれはじめるのを別れの挨拶に豪華客船が港を離れていくのも、港町ならではの光景だ。 「()えな景色ぃ」    SNSに投稿しよう、前の学校の友だちとつながっているところに。早速ブレザーのポケットをまさぐったものの、スマートフォンはロッカーに入れっぱなしだ。  カモメの群れが手すりに羽を休めにくる。解放感を味わえる素敵な場所が貸し切り状態なんて、贅沢だ。手すりに沿って、スキップしながら屋上を半周する。  すると死角に入っていた塔屋の陰で先客と遭遇した。  生徒会長こと当麻遼一だ。ヨガマットを敷いた上に座り、両目をつぶって、左右の足首を反対側の太腿の上に載せる形の胡坐をかいている。  神秘的なオーラを発するさまから一瞬、ゆったりと流れるガンジス河が二重写しになり、好奇心をいたく刺激された。  ぱたぱたと靴音が近づいてくる。当麻は整えすぎない程度に整えてある眉をひそめた。生徒会の運営に何かと神経をすり減らす今日このごろ、昼休みは教室の喧騒を離れて、屋上ですごすのが常だ。  密かにベイビーズと呼ぶ執行部のメンバーにも、リフレッシュタイムを邪魔されぬよう、隠密行動に徹しているのだが、闖入者(ちんにゅうしゃ)は誰だろう。 「もしもぉし、何しているんですか?」  当麻は嫌々、薄目をあけた。にこにこ顔がアップで迫り、ぎょっとしたもののポーカーフェイスを保つ。相手にしなければ空気を読んで去っていくだろう。それを期待して知らんぷりを決め込む。    返事がないということは、当麻はもしかすると耳が遠いのだろうか。空良はそう思い、 「階段から落っこちたとき助けてくれて、ありがとうございました!」  大声を張りあげた。さらに、ぺこりと頭を下げたがまたもや黙殺された。当麻の正面にしゃがみ、掬いあげる角度から、目許の涼やかな顔を覗き込む。  ついでに、ひらひらと手を振ってみても反応がない。当麻は爆睡しているのか、はたまた気を失っているのか。にわかに心配になった。肩を摑んで躰を揺さぶると、託宣を下すような口調で答えが返った。

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