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第15話
「座禅を組んでいる。精神統一を図るには結跏趺坐 の姿勢で瞑想に耽り、天地 と語らうのが一番だ」
座禅、と空良は鸚鵡返 しに呟いた。ひと呼吸おいて目を輝かせると、棒状のものを振り下ろす真似をした。
「座禅中に動くと、お坊さんがぺしって肩を叩くでしょ。お坊さん役のご用命はありませんか」
「きみは、二年四組の小沢空良くんだね。同じクラスの小沢大和と親御さんが再婚した関係で兄弟になったと聞きおよんでいる。なかなかユニークな性格をしているね」
「おれのことまでフルネームで憶えてて、すごい。生徒名簿を暗記してるとかですか」
「高等部の生徒の名前と顔は一致する。それでなくとも小沢大和は目立つ」
空良は大きくうなずいた。大和は八頭身の細マッチョで、そのうえブレザーの袖をたくしあげたりネクタイの結び方をひと工夫したり、と制服をカッコよく着崩している。
ペニスにしても綺麗に皮がむけていて、昇りつめる寸前にはコンクリートを流し込んだように硬くなって、そのくせ絹の手ざわりで……、
「秘技、特定の記憶を強制削除っ!」
海馬に衝撃を与える狙いで自分で自分の頭をポカポカ殴ると、腕をやんわりと摑まれた。
「自傷行為に走るなど、きみが可哀想だ」
「でも、これには深い理由 があって……」
触手くん1号(仮)の仕事ぶりから始まって事細かに説明しようとしたせつな、ひょいと思い出した。当麻になつくと生徒会の役員連中に睨まれる、と大和から釘を刺されていたのだった。
だが、鋭い視線に射すくめられて動けない。生徒会長ともなるとやっぱり格が違うんだなあ、とドキドキしだした胸を押さえた。
愛称は確か無敵王子で、ということは王子に姫抱っこされた時点で〝姫〟認定……?
わたわたと手をもぎ離したはずみに、トートバッグが傾いた。あわてて弁当箱を開いてみると、よかった、被害はミートボールが片寄った程度だ。
空良は、にこやかに弁当箱を差し出した。
「ゴマをまぶしたおにぎりが鮭で、とろろ昆布でくるりがタラコです。おひとつ、どうぞ」
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